名護市辺野古の新基地建設を巡り、県による埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相裁決は違法だとして、周辺に暮らす住民が裁決の取り消しを求めた訴訟の判決で、那覇地裁(福渡裕貴裁判長)は26日、原告適格を認めず訴えを却下した。国交相裁決に問題があったかどうかの判断は示さなかった。市民側は控訴する考えを示した。
2020年3月に那覇地裁(平山馨裁判長)が出した、執行停止の申し立ての決定では4人の原告適格を認めていた。福渡裁判長は判決理由で、原告の居住地が予測される騒音分布図(コンター)でW値75の外側にあることなどから「健康や生活環境に、著しい被害を直接的に受ける恐れがあるとは認められない」と判示。原告適格があるとは認められず、訴えが不適法だとした。
埋め立て予定区域の軟弱地盤や活断層の問題が、国交相裁決が違法であるとの理由になり得るとしつつ、原告が直接的に海域の問題について被害を受けるわけではないため違法性を主張できないと判示した。
13年12月に当時の仲井真弘多知事が辺野古の埋め立てを承認。その後、軟弱地盤の判明などにより18年8月、県が辺野古沖の埋め立て承認を撤回し、工事が一時中断した。沖縄防衛局は国交相に審査請求を申し立て、国交相は19年4月に県の承認撤回を取り消す裁決をした。市民は裁決の取り消しと執行停止を求めて提訴。那覇地裁は20年3月、執行停止の申し立てを却下したものの、15人のうち4人は基地完成後に騒音被害などを受ける恐れがあるとし、原告適格を認めた。20年4月、原告のうち11人に原告適格がないとして訴えを却下し、残る4人の審理が続いていた。国交相裁決の取り消しを求める訴訟は県も国を相手に起こしているが、裁判所の審理対象に当たらないとして一審、二審ともに入り口で退けられている。