牛主50年、86歳今も現役 愛牛に誇り注ぎ 安慶名誠一さん<闘牛語やびら 復帰50年記念大会・全島大会>1


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全島大会に出場する誠月龍と牛主の安慶名誠一さん=うるま市石川

 鎌を助手席に置くと、車のエンジンをかける。向かう先は愛牛の餌を集める草刈り場。安慶名誠一さん(86)=うるま市石川伊波=の、30代の頃からの変わらぬ1日の始まりだ。「人に任せるなんてことはできないからね」と穏やかにほほえむ。市石川嘉手苅の牛舎では、5月8日開催の全島闘牛大会に出場する誠月龍(まことつきりゅう)が餌を待ちわびる。

 牛には大量の餌が必要となる。畑を所有して機械を使う牛主も多い中、安慶名さんは昔ながらの手刈りを貫く。「間違えて足を切ることもあるよ」。笑いながら鎌で切り裂かれた長靴を指さす。仲間と輪番制を取り入れる牛主もいるが「自分の牛だから」と1人で毎日約3時間かけて草を刈る。

 愛牛は2019年の春の全島闘牛大会の重量級タイトルマッチ挑戦の経験もあり、今回も8連勝無敗の実力牛と激突する。全島大会は県内から選ばれた猛者しか出場できない。「全島は牛主の目標であり、誇り高い大会だから何度でもうれしいよね」

 1972年の日本復帰後、30代で牛主となった。同世代の仲間たちが若者へバトンを渡していく中、現役牛主として世話を続ける。今大会の牛主の中で最高齢。「闘牛しかないから。それだけだよ」。誠月龍をいとおしそうになでた。


 日本復帰50年を記念した復帰記念闘牛大会と、全島闘牛大会が5月7、8日にうるま市内で開催される。両大会の出場牛の牛主、大会を支える人たちの闘牛にかける思いを紹介する。
 (新垣若菜)


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