制服変えると意識も変わる ジェンダーフリー化検討 沖縄ツーリスト<沖縄からSDGs>


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 国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)は県内でも認知が広がり、市民や企業の取り組みも活発化してきた。2022年度の琉球新報のSDGs特集は、県内を中心に国内、海外の話題を紹介し、県民が気軽に参加できるアクションの情報を提供する。

社内で対話、みんなで学ぶ機会に

 

刷新を検討している男女別の制服を着る沖縄ツーリストの神谷香菜さん(左)と平良仁一さん=那覇市の同社

 女性は真っ赤、男性は濃淡ある青の生地に南国イメージのハイビスカス柄。沖縄ツーリスト(OTS、那覇市)は広く知られた制服をジェンダーフリー(性別を問わない在り方)に刷新しようと検討を始めている。1978年から続く伝統の制服を、誰のためにどのように変えるのか、会社として何を目指すのか。制服のデザインにとどまらない話し合いが進んでいる。

 プロジェクトのリーダーを務める神谷香菜さんは昨年度、持続可能な観光産業を考える人材育成研修に参加した。SDGs(持続可能な開発目標)に関わる取り組みを自社でどうつくるか考える中で「ペットボトルを使わないツアー」などと並んで挙げた案の一つが制服の変更だった。

 古いジェンダーイメージと重なる「女は赤、男は青」の制服は入社と同時に全員に自動的に割り振られる。外見や戸籍の性別と本人の性自認が異なる性的少数者への配慮や、「男/女はこうあるべき」といった性別役割にとらわれない考え方が求められる時代にあって「制服を変えることで、時代が変わったことを社員自身も自覚できるのでは」と考えた。

 研修報告で経営層に話すと「やってみたら」とすんなりゴーサインが出た。各部署に声をかけ、性別・年齢も多様な13人で今年2月、検討チームを結成した。

 男女別の制服はデザインだけではなく素材も違う。男性用はしわになりにくい化繊だが、女性用は綿100%。手間がかかり夏場は宿泊を伴うツアー添乗中もアイロンが欠かせない。社員全体にアンケートをすると女性を中心に「変えたい」とする声が上がった一方で、「このデザインが自社の象徴」「添乗中の目印になるから変えたくない」という人もいた。

 聞き取りをする中で「SDGsって何?」「ジェンダーって?」といった疑問もあり、ジェンダーを学ぶ研修も取り入れた。制服を着て顧客に提供する商品の価値や、製造時の環境や縫製事業者への負担軽減にまで話題は広がり、深まっているという。

 神谷さんは「一人一人の意見を大切に、対話しながらみんなでゴールを目指す実践。制服を入り口に、みんなが自社や社会を考え動くきっかけになればいい」と話した。

社外から講師招き研修会

 

沖縄ツーリストの制服刷新チームの研修で、女性活躍推進について話す金秀アルミ工業の神田幸枝さん(右)=4月8日、那覇市の同社

 沖縄ツーリストの制服刷新検討チームは3~4月、社外講師を招いてジェンダーやSDGsの研修を重ねた。8日には県内でも女性登用を先進的に進める金秀グループの女性活躍推進について、金秀アルミ工業取締役執行役員の神田幸枝さんらから話を聞き、意見を交わした。

 金秀グループでは「100年企業を目指すには女性の能力が必要」と2013年、女性管理職の割合20%を目指す「W(ウイメンズ)20」を設定し16年に達成。21年には女性活躍推進委員会を発足させ、男性管理職の意識改革などに取り組む。

 神田さんらは仕事と家庭の両立支援へ育児ガイドブックも作成した。父親編、母親編などと並ぶ上司編では「出産を迎える社員に『またか』ではなく『おめでとう』と言うよう伝えた」。

 女性が自信や発信力を付けるための研修では、女性が男性に依存・他責・傍観していないか内省することを学んだとし「女性が発言しないのは宝の持ち腐れ」との講師の言葉も紹介した。

 「仕組みをつくって終わりではなく社員の声を聞いて何度でも見直すこと。それが働きがいの向上や離職防止にもなる」と継続して社員と一緒に取り組む重要性を強調した。

 参加者は「部署や世代によって上司や周囲の理解度が違い、働きやすさも変わる」「男性上司が雑用や掃除をせず業務『しか』しない。そういう人が部下の産休を『また休むの』と言ったりする」と実情を指摘。意識改革へ「『やーなれーふかなれー(家での習慣は外でも出る)』だから家事や子育てを業務としてやらせてはどうか」といった意見も出て盛り上がった。

 金秀鋼材執行役員の内間ひでのさんは「W20が始まった頃、グループ内で女性の意見交換会に行こうとして上司に『仕事が優先』と言われたこともあった。またかと思われても繰り返し発言し発信しなければ変わらない」と実感を込めた。

 この日の研修はOKINAWA SDGsプロジェクト(OSP、事務局・琉球新報社、うむさんラボ)の縁で実現した。OSPでは各種研修の相談も受け付ける。


 SDGs(持続可能な開発目標)は2015年、国連サミットで採択された国際社会の共通目標。環境問題や貧困などの人権問題を解決しながら経済も発展させて持続可能な未来を創ろうと、世界中で取り組みが進められている。詳しくは琉球新報のホームページ「沖縄からSDGs」まで。https://ryukyushimpo.jp/special/SDGs.html見られる。

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取材・黒田華、レイアウト・荒井良平、デザイン・相弓子