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<書評>『米国の沖縄統治と「外国人」管理』 強制送還 権力の姿に迫る

『米国の沖縄統治と「外国人」管理』土井智義著 法政大学出版局・7590円

 本書は、米国統治下の沖縄において「外国人」を創出する線引きがどのように変遷し、該当する人々の「管理」をめぐってどのような権力が作用していたのかを解明することを意図している。その分析において著者がとくに重視するのは強制送還を遂行する権力であり、その「系譜」を明らかにするために、琉球政府発足以前の群島間移動によって生じた「無籍者」、基地建設工事に従事するため入域した日本人労働者、奄美返還後に沖縄に滞在していた奄美籍者などに関する「管理」に焦点が当てられている。

 著者は、沖縄統治に関連する公文書を幅広く調査し、本書の礎となる記録を収集・分析することを通して、米国の沖縄統治に関する全く新しいテーマを切り開いた。同時にそのテーマは、強制送還を遂行する権力の姿に迫るという点において、世界史的な普遍性を有しており、本書の議論は幅広い権力批判の思想・理論をふまえて展開されている。それゆえに、本書において重要な位置を占める用語の意味するところを理解するためには、序章で提示された「分析視角」を熟読することが必須であり、気になる章から開いてみるという読み方はお勧めできない。

 本書の論旨において注目すべきは、その「管理」が出入域のチェックを大きく超える意図を持ち、統治の安定性を脅かすと目された人々に対する「社会管理」の様相を色濃く帯びているという点である。その一つの重要な側面を紹介すると、強制送還を正当化する論理には、現地(沖縄島)の労働市場を「保護」し、「住民経済圏」の安定化を図るという方針が強力に組み込まれていた。このような統治者の論理は、その庇護(ひご)の対象となる「住民」との間に結託関係を生み出すものでもあり、それゆえに「社会管理」を遂行する権力は、統治者のみによって体現されるものではないのである。このような本書の視角からどのような歴史像が構想されうるのか、多様な議論の展開に期待したい。

 (鳥山淳・琉球大島嶼地域科学研究所教授)


 どい・ともよし 琉球大島嶼地域科学研究所PD研究員。主な論文に「1950年前後の沖縄社会における『無籍者問題』と『在沖奄美人』」「〈別の戦後日本〉としての琉球列島」がある。



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