海洋温度差発電、実用化へ 久米島で実証スタート、世界初1000キロワット


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商船三井が海洋温度差発電の実証実験(100キロワット級)で使用している設備=4月16日、久米島町真謝

 【久米島】海運業大手の商船三井(東京都、橋本剛(たけし)社長)が、久米島町で世界初の大規模な海洋温度差発電の実用化に向け、実証実験を始めたことが1日までに分かった。2025年をめどに建設費用数十億円を掛け、町内で1千キロワット級の発電設備の新設、稼働を目指す。売電も視野に入れており、商用化されれば新たな持続可能なエネルギー資源として期待される。

 海洋温度差発電は、太陽の熱で温められた表層海水と、冷たい深層海水の温度差を利用して発電する再生可能エネルギーの一つ。二酸化炭素排出量が少なく、天候に左右されず安定した電力供給が可能な発電方法として注目されている。

 熱帯、亜熱帯で適用可能とされ、国内では沖縄周辺や小笠原諸島などが適地と見込まれている。

 久米島町では、深さ15メートルからくみ上げた年平均25・7度の表層海水の熱で沸点の低い代替フロンを蒸発させタービンを回し発電している。発生した代替フロンの蒸気を、深さ612メートルから取水した年平均9度の深層海水で冷やして液体に戻し再利用する。

 商船三井は、1千キロワット級設備の新設、稼働に向けて、ノウハウの獲得、蓄積を目的に、4月1日から久米島町と佐賀大学との三者で、県の「海洋温度差発電実証試験設備」=町真謝=を活用した実証実験を始めた。海洋深層水事業に使われている施設で、出力は最大100キロワット。

 商船三井は1千キロワット級の設備での発電コストについて、大規模な取水管の建設コストを除いて1キロワットあたり20円程度と試算する。資源エネルギー庁が想定する30年時点での発電コストと比べると、液化天然ガス(LNG)や太陽光による発電よりは割高だが、石油火力やバイオマス(専焼)、洋上風力などに比べると安く抑えられる見込み。

 実用化に向けて商船三井は「脱炭素社会の実現という、大きな社会課題の解決に貢献したいという強い思いで取り組んでいる」と意欲を示している。
 (照屋大哲)