取水管新設に130億 久米島の海洋温度差発電 予算確保が大きな課題


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 【久米島】商船三井(東京都、橋本剛(たけし)社長)が久米島町で、検討している1千キロワット級の海洋温度差発電を実現するためには、海水をくみ上げる取水管の拡大が必須になる。町は現在、取水管新設に向けた計画を策定中で、23年3月にまとめる。建設費用は概算で130億円掛かりコスト面が大きな課題となりそうだ。

 既存の取水管は国内産では最大規模の内径28センチ。町はこれを2本使い、水深612メートルから日量1万3千トンの海洋深層水をくみ上げている。

 だが、出力1千キロワット級には現在の約10倍の日量10万トン超の取水が必要になる。そのため町は水深約700メートルの深層から海水をくみ上げる新たな取水管の敷設を構想している。現在取水する水深よりさらに深層にある海水は水温が低く、発電効率が上がるという。新設にあたり、国産で同様の取水管の本数を増やすのか、本数を抑えるため内径が国内のものより大きい海外製を使用するのか、コスト面などを含め検討を進めている。

 町の見積もりでは取水管の建設には概算で130億円掛かり、予算獲得が大きな課題となる。町の担当者は、「町の持ち出しでは限界がある」として「まずは国の補助を想定している」と話した。その上で「県や民間からの投資も検討していきたい」との見解を示した。

 一方、世界初の大規模な海洋温度差発電の実現に向け、商船三井の担当者は「取水管拡大が肝だ。しかし、ばく大なコストが掛かるためネックになっている」と語った。取水管への出資については「現時点では想定していない」として、町の計画のとりまとめを注視する構えだ。
 (照屋大哲)