「何代目ですか」。海洋博公園のオキちゃん劇場でショーを披露するミナミバンドウイルカのオキちゃんは、何度も同じ質問を受ける。回答はいつも一緒。「初代です」
オキちゃんは、沖縄の日本復帰を記念して1975年に開催された沖縄国際海洋博覧会(海洋博)のマスコットだった。海洋博の会場で迫力満点のイルカショーを披露し、瞬く間に県民の心をつかんだ。
復帰50年の節目となる2022年5月15日時点で、オキちゃんの飼育期間は47年と14日。ミナミバンドウイルカの国内最長飼育記録だ。今も現役でショーに出演し、海洋博の時と同じように多彩な芸で観客を魅了する。
おじいちゃんもおばあちゃんも、お父さんもお母さんも、孫もひ孫も目にしたオキちゃんは同じ。オキちゃんは世代をつなぐ県民のアイドルだ。同時に、観光立県を支える立役者であり、健康長寿の代表でもある。
政治、経済、社会と復帰後も沖縄は苦難が続いた。それでも、県民は艱難(かんなん)辛苦を乗り越え、歩みを進める。深く沈んで高く飛び上がるオキちゃんのジャンプのように、望ましい未来へと向かって。(稲福政俊)