沖縄県内のハンセン病元患者らに対する差別根絶や円滑な社会生活のための課題解決を目指し、県がハンセン病回復者や学識経験者、関係団体などで構成する協議会を本年度中にも立ち上げる方針を固めたことが22日までに分かった。県の啓発パンフレットにも見直しが入る。患者らの隔離政策に終止符を打った「らい予防法」の廃止から26年経った現在も元患者やその家族に対する差別や、地域社会での生きづらさは根強く残る。解消に向けて当事者の意見をくんだ取り組みが行われることが期待される。
協議会の設置は「沖縄ハンセン病回復者の会」が昨年11月に玉城デニー知事と面談し要望した。今年1月に県知事名で回答書が出され、協議会の早期設置の方針を伝えた。「ハンセン病問題の全面的な解決に向け、回復者の皆さまに寄り添った協議を行う」とした。
県関係者によると、今年1月12日には協議会設置の前段階として準備会の初会合が行われ、これまでに2回開催した。準備会の作業は協議会のメンバー構成や協議内容の検討と、6月の「ハンセン病に関する正しい知識を普及する月間」に合わせて制作する県の啓発パンフレットの記述修正が2本柱となる。
啓発資料を巡っては、官民を挙げて患者を地域から排除した「無らい県運動」や、沖縄戦とハンセン病患者の関わりなど沖縄独自の歴史を書き込むよう求める声が上がっていた。
県は本年度のパンフレットは準備会の中で議論して修正していく。来年度以降分は、発足後の協議会で議論を深め、さらなる見直しを検討する。
回復者の会はまた、ハンセン病に起因する後遺症などの治療や介護を、地域の医療機関で安心して受けられる体制づくりについても要望していた。県は協議会で議論する事項は検討中とするにとどめており、元患者への生活支援も焦点となる。
県の担当者は「回復者の方とお話をする機会があり、頂いた意見や思いにできるだけ応えていきたい」と強調。人権回復に取り組んだ元患者が亡くなるなど高齢化が進む中「スピード感をもって取り組みたい」と話した。 (知念征尚)
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