【記者解説】国の「裁決」と「指示」密接な関係に異議 辺野古、沖縄県の係争委申し出 


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 辺野古新基地建設の軟弱地盤改良工事に伴う設計変更を県が不承認とした処分を巡り、国交相が不承認を取り消した裁決と、承認を求めた是正指示の2つについて、県が国地方係争処理委員会に申し出た。裁決と指示が密接に関係して県に設計変更承認を迫る状況に、異議を申し立てた形だ。

新たな護岸建設が始まった辺野古の新基地建設現場=2022年3月27日午前10時40分ごろ、名護市

 県側は双方の係争委申し出で、国側対応の違法性を訴える一方で、昨年11月の不承認処分の正当性を主張する。地方自治法に基づく指示と、行政不服審査法に基づく裁決の連結を「不当」と断じている。

 辺野古新基地建設を巡る県と国の攻防で、県は係争委へ審査を申し出てきた。国の対抗措置取り消しを求める県の申し出を「審理対象外」と却下したこともあり、内容審議に入るかの「入り口論」も焦点となる。

 係争委は申し出から90日以内に審査することが規定されている。裁決については8月8日、是正指示については8月29日が期限となる。

 沖縄防衛局が軟弱地盤改良工事に着手するには、県による承認は必須となる。係争委の判断は遅くとも8月までに出るが、係争委の判断に対して県・国のどちらかが「不服」として訴訟に至る展開が想定される。9月11日投開票の知事選でも、新基地建設問題への県の対応は争点として問われそうだ。

 訴訟を経て、国が県から承認を得られたとしても、軟弱地盤改良工事を経て米軍の使用までに12年を要する。

 その間、国が基地建設の目的に掲げる「普天間飛行場の危険性除去」は置き去りにされ続けることになる。

(塚崎昇平)