沖縄県女性力・平和推進課は1日、沖縄戦で亡くなった犠牲者の名前を刻む糸満市摩文仁の平和の礎(いしじ)に、新たに55人を追加刻銘すると発表した。遺骨収集活動に取り組む「沖縄蟻の会」の南埜(みなみの)安男さん(57)の働き掛けで刻銘が実現した、広島県の船員軍属24人が含まれている。二重刻銘などで1人を削除するため、刻銘者は計24万1686人となった。
南埜さんが国会図書館の「戦没船員名簿」と平和の礎のデータベースを照合した結果、37都道府県で約400人の県外出身者の刻銘漏れを確認。その内、広島県では船員軍属39人を確認した。
南埜さんは親交のある広島経済大の岡本貞雄名誉教授の協力を得て、広島県社会援護課に刻銘申請を働き掛けたという。広島県によると近年、沖縄戦戦没者を数十人単位で申請するのはまれで、39人全員を申請した。
広島県民の追加刻銘について南埜さんは「今後百年以上残される平和の礎に、24人の生きた証が刻銘される意義は大きい」と喜んだ。一方、「軍人と比べ軍属の確認作業が不十分」と指摘。戦後77年が経過した今、都道府県によっては沖縄戦戦没者に関する認識に温度差もあるため、周知活動も続けていくという。
平和の礎に刻銘される55人の内訳は県内27人、県外28人。県内市町村別では、那覇市4人、本部町と名護市、沖縄市が各3人、うるま市と嘉手納町、与那原町、宮古島市が各2人、伊是名村、宜野座村、中城村、浦添市、豊見城市、石垣市が各1人となっている。県外では広島県が24人、山口県と香川県、佐賀県、鹿児島県が各1人だった。
刻銘作業の日程は調整中。平和の礎は1995年6月23日に除幕した。
(嘉陽拓也)