通常国会が15日に閉会し、政府は同日の閣議で、参院選の日程を22日公示、7月10日投開票と正式に決定した。沖縄の「慰霊の日」の公示を避けた形だが、与野党の「選挙モード」は一気に加速する。任期や公職選挙法の規定を踏まえた日程とはいえ、公示日が沖縄戦で亡くなった人々を鎮魂する「慰霊の日」の前日となったことに違和感を持ち、残念に思う県民も多いだろう。
2016年の参院選も、今回と同様に6月22日公示、7月10日投開票の日程で選挙が実施された。当時、政府は23日の「慰霊の日」の公示を明言したため、県内41市町村の首長すべてが反対するなど、県内で反発が強まった。そこで、政府・自民党は公示日を1日前倒し、選挙期間を18日間にすると決定した経緯がある。今回の日程決定の流れも、16年選挙を踏襲した形と言える。
とはいえ、慰霊の日と選挙日程について岸田政権は考慮しただろうか。沖縄戦で県民は日本軍の戦闘に巻き込まれ、熾烈(しれつ)な地上戦の結果、住民の4人に1人が命を落とした。その記憶を将来に継ぎ、肉親を悼む大切な日の前日に「選挙戦」を公示することを県民がどう感じるのか。原爆で多くの住民が犠牲になった広島県選出の岸田文雄首相だからこそ、より想像力を働かせてほしかった。
県は「慰霊の日」に開催する沖縄全戦没者追悼式に岸田首相を招待した。出席すれば首相の参加は3年ぶりだ。歴代知事は平和宣言で首相を前に戦争の愚かさと共に米軍基地が集中する沖縄の不条理を訴えてきた。
今年の慰霊の日はウクライナ侵攻で世界情勢が不安定化する中で迎え、国内では防衛力強化が積極的に議論されるなど「平和」を願う沖縄の思いとはかけ離れた動きも広がる。玉城デニー知事や岸田首相がどのようなメッセージを発するか。例年以上に注目したい。