育休復帰後のキャリアに悩んでいます<沖縄お仕事相談デスク>


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

今回のお悩み

現在第二子を出産し育休中です。10月に職場復帰予定なのですが、時短勤務が良いのか、フルタイムが良いのか、とても悩んでいます。

家族は「3歳まではお母さんがしっかり育てなきゃ」と時短勤務を勧めてくれるのですが、個人的にはマミートラック(育休復帰後の女性が自分の意思とは関係なく出世コースから外されること)が心配で、少し無理をしてでもフルタイムで復帰した方が良いのではないかと考えています。

でも仕事と子育ての両立も心配で…どうすればいいでしょうか。

 

今回の回答者は…

女性のキャリアのことならお任せ

(株)ワダチラボ代表取締役でキャリアコンサルタントの

福島知加さんです。

 

「マミートラック」や仕事と子育ての両立不安、そして「三つ子の魂100まで」の呪縛…相談者の不安や葛藤がこの文章だけで切実に伝わってきます。

そして、こういったお悩みは育休中のみならず、復帰後も悩まれるママパパも少なくありません。

 

 

1、調査データからみる仕事と育児の両立

 

①出産を機に約5割が退職?!

第15回出生動向基本調査(2016年)によると、出産を機に46.9%の女性が退職しています。

また別の調査データ(厚生労働省「令和2年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 報告書」)によると、41.5%の女性が仕事は続けたかったが、仕事と子育ての両立に不安を感じ退職をしているとのこと。

特にこの2年は新型コロナウイルス感染防止などの影響で、さらに仕事と子育ての両立が難しくなったと言われています。

 

②約5割の女性が「マミートラック」に該当

21世紀職業財団の「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」(2022年)によると、マミートラックにはまっている女性が764人中49.6%。総合職でも39.0%いると言います。

同じ調査資料でマミートラックを脱出した方法として、「定時退社だけでなく、必要なときには残業するようにした」が30.1%、「時短をやめてフルタイムで働くようにした」が25.2%、「上司からの働きかけがあった」が24.3%、「上司に要望を伝えた」が23.3%。そのほか「自己啓発した」は13.6%。ほとんどは自分から主体的に行動を起こした結果がマミートラックから脱出できた要因にあげています。

 

 

2、職場復帰までに抑えておきたい2つのこと

 

① 自分の「~べき」を理解し緩和する

皆さんが子育てをする上で大切にしていることは何ですか?

この回答は皆さんが子育てをする上での大切にしている価値観につながりますが、一方でその価値観は自分の「〜こうあるべき」「当たり前」となり、その「~べき」が守れないと自分に対して憤りを感じたり、周りへの罪悪感につながります。

例えば、ママが子育てをするべきという価値観があれば、パパに育児参画をお願いしようという発想に至らない可能性があります。

私のセミナー受講生でも「家事育児は完璧にやるのが当たり前」と考えている女性も少なくありません。その女性たちは家事も育児も自分だけで完璧にこなそうとして、周りに相談やサポートの依頼もできずに一人で抱え込んでしまったり、できないことにイライラしたり、体力の限界がきて体調を崩しやすくなったりします。

まずは自分の子育てをする上で大切な「べき」、仕事をする上で大切な「べき」を理解し、イライラや罪悪感の原因になるような「べき」があったらその「べき」を緩められないか考えてみてください。

 

同時に、家族や親戚、会社の同僚など他者にも「べき」があります。

相談者のように家族から「こうあるべき」を伝えられる場面もあるでしょうし、男性の上司や同僚が良かれと思って過剰な配慮をする場合もあります。その際はその方の考えを一旦受け止めた上で、自分はどうしたいのかを考えると、自分も相手も大切にしながら人間関係を育むことができます。

② 協力体制を整える

復帰前に家事育児のサポート体制について家族で話し合うことをオススメします。ママが育休に入ると、家事育児の全過程を担うことが多いので、復帰後もそのままやってくれると思っているパパも少なくありません。

今後のママパパのキャリア設計・家族計画・経済面について会議を行い、目標が明確になったら、その目標が実現可能にできるよう協力体制について話し合っていきましょう。特にキャリア設計は経済面にも直結していきますので、具体的に数字を出していくとイメージしやすいと思います。

ちなみに、ニッセイ基礎研究所「女性の働き方ケース別生涯所得」の調査データによると、大卒後正社員のままで働き続けて3歳まで時短対応した場合の生涯年収は2億2070万円であるのに対し、復帰後に退職し非正規雇用になった場合の生涯年収は9670万円、パート社員になった場合の生涯年収は6147万円となっています。子供の養育費や老後の蓄えも含めて検討していくと、より合理的な家族会議が進められるのではないでしょうか。

また、協力体制を整える上で利用できるリソース(家族や親戚、ママ友、地域のサポート施設、ベビーシッター、家事代行、地域情報、人脈など)はどんどん活用していきましょう。

特に急な発熱等による保育園のお迎えコールや、お休みについてもどう対応するのか、事前に考えておくといいですよね。

身近なママ友や先輩ママは地域の情報を知っていることも多いので、相談してみるといいでしょう。

 

3、「低空飛行でもキャリアを諦めない」こと

 

これまで5千人以上の女性達の様々なお悩みに触れてきましたが、その5割は仕事と子育て両立に対する不安から来るお悩みでした。

仕事と子育ての両立と言っても様々な背景があり、今すぐ解決できないこと、コントロールできないこともあります。

そのような時、私がお伝えしていることが「低空飛行でもキャリアを諦めない」ということ。

休んでもいいし、止まってもいい、少しずつでもいいので、キャリアを諦めない心だけ持っておいてほしいです。

私もそのサポートができるよう努めていきたいです。

◆執筆者プロフィール

福島知加(ふくしま・ちか)(株)ワダチラボ代表取締役

営業、人事、キャリアコーチの経験を経て独立。 人材支援歴12年。

企業や自治体の人材育成・定着支援、大学生の就活〜求職者支援を実施しこれまで2万人以上の支援に携わる。

2021年10月より育休取得者向けのオンラインスクール「育休スイッチ」を開校。

趣味はアイドルを応援すること、泡盛を嗜むこと。2児のママ。