「沖縄県国民保護計画(県計画)」は有事に県民を保護する計画書で、2005年に県が政府の方針に基づき作成した。有事で軍事基地が機能を最高度に発揮するのは必然だが、県計画には米軍基地や自衛隊基地の展開方法への検証がない。県の計画にもかかわらず、沖縄戦の教訓を生かしていない。有事法制の解釈に今でも真実である「軍隊は住民を守らない」という視点も欠落している。
一方で有事で中核となる自衛隊が作戦や戦術面から沖縄戦の教訓を活用している。例えば「有事避難訓練」では住民に対し「認識の一致」を求めており、日本軍が主題とした「軍官民一体化」を彷彿とさせる。自衛隊のある資料では戦闘地域に住民を残さないことが最も重要としているが、自衛隊の沖縄戦認識には曲解や誤解も多く、日本軍が住民の避難地域を戦場化した事実に対する反省は見受けられない。
住民視点の沖縄戦の教訓が欠落した県計画は「市町村国民保護計画」を経て住民へ浸透し、政府の日米安保体制(米国の戦争への日本の参戦)の末端を担うことになる。明らかに77年前の軍と県のコピーだ。地方自治体が政府の仕掛けた上意下達の行政機構に組み込まれ、「米軍有事」に巻き込まれていく県民の姿を想像すると、住民自治は憲法精神において正念場を迎えているといえよう。
(沖縄戦研究)