古い写真は地域の財産 デジタル保存・公開の道探る 収集活動の深谷さん講演 沖縄・南城市


社会
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 【南城】貴重な古い写真を活用し地域づくりにつなげようと、第1回学びつながる地域づくりを考える・オンライン事例発表セミナー(玉城青少年の家主催、県教育委員会後援)が4日、沖縄県南城市玉城の県立玉城青少年の家(前泊肇所長)で開催され、市民ら23人が学んだ。地域の古い写真を関係者から集めてデジタル保存(アーカイブ)する活動をしている深谷慎平さんが講師を務め「古写真デジタルアーカイブの活用と地域づくりにもたらす利益について」と題して講演した。

 講演は、玉城青少年の家活動促進係リーダーの相川和郎さんと兼本暖さんがオンラインで配信して進められた。

台風による豪雨で地滑りした桃原ヤードゥイをバックに写真に納まる住民たち。旧佐敷村史に掲載された

 深谷さんはデジタルアーカイブとは何かについて説明。史跡旧跡、文化財のほかあらゆる知的遺産をデジタル処理、保管、管理して公開し、誰でも簡単にアプローチできることが特徴と詳しく説明した。さらに憲法21条の「知る権利」に応えるためにもデジタルアーカイブは必要だとした。

 深谷さんは各地域で集めた古い写真を公開して歴史を振り返った。1枚は「桃原ヤードゥイ(屋取)」にまつわるものだ。120余年前の廃藩置県後の第3期ヤードゥイ集落形成期に、南城市佐敷・新里に移り住んだ首里士族が居を構えて形成された桃原ヤードゥイ。1959年10月に沖縄本島を襲ったシャーロット台風の豪雨による地滑りで大被害を受け、桃原ヤードゥイの全所帯が立ち退きする際の「分散会」の写真が紹介された。

南城市旧知念岬から海中水路が敷設され、水不足解消を島あげて祝う久高島の住民たち

 また、飲料水不足で困っていた南城市知念の久高島に、念願の海中水路が向かい側の久手堅区海岸から敷設され、「しあわせの水ありがとう」と書かれた横断幕を掲げて島を挙げて祝うカラー写真も提示された。参加者らはあらためてデジタルアーカイブの活用価値を痛感した。

 久高島への海中水路施設前に、郵便配達員がタンクに水を入れて船で引っ張って運んでいた時代をよく知っている吉富区の富山嘉栄さんや、新里区の元区長を務めていた西村松青さんも参加。桃原ヤードゥイを思い出しながら事例発表に聞き入っていた。

古写真を活用して地域づくりを考えるセミナーで講演する深谷慎平さん=4日、南城市玉城の県立玉城青少年の家

 深谷さんは、デジタルアーカイブが地域にもたらす利益は「それぞれが決めていい」と説明。自己決定権と地域参画が大切だとし、その先に民主主義の充実と発展があると解説した。

 (知花幸栄通信員)