ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、安全保障への関心は高まる一方だ。東シナ海進出の動きを強める中国を念頭にした「台湾有事」を懸念する声もある。参院選では各政党・候補者の安全保障に関する考え方は全国的に重要な争点で、沖縄選挙区に立候補する無所属現職の伊波洋一氏(70)と自民新人の古謝玄太氏(38)=公明推薦=も、それぞれの安全保障観を示している。
伊波氏は「自民党政権が『台湾有事』が『日本有事』になりうる法体系にした」と批判。政府が中国との対話を閉ざしているとし、外交努力を尽くすべきだとの考えを示す。
古謝氏はウクライナ情勢を受け「対話だけで自国の平和を守ることは難しい」との認識を示し、防衛力強化や米国といったパートナー国との連携強化による「抑止力」向上が必要だと主張する。
ウクライナ情勢を受けて、自民党などから現在の倍の規模を視野に入れた防衛費増額が必要だとする声も上がる。
伊波氏は防衛費倍増には5兆円が必要だとして「日本の財政に5兆円の拡張余地はない」と一蹴。少子高齢化などへの対応に政策資源を集中すべきだと主張した。
古謝氏は「予算額ありきの議論をすべきではない」とした上で、アジア、太平洋の平和と安定を実現するために必要な防衛費を積み上げて議論すべきだとする。
参院選では憲法改定に前向きな「改憲勢力」が、国会発議に必要な3分の2以上の議席を維持できるかも焦点となる。
伊波氏は日本復帰後も沖縄ではいまだ基本的人権や生存権保障、地方自治、平和主義などがないがしろにされているとして、現行憲法の掲げる理念の実現が先だとして改定に反対の立場だ。
古謝氏は自衛隊の存在を憲法の中で明記し「自衛隊違憲論」を解消する必要があるとするほか、参院の合区問題を踏まえて、同院議員を都道府県代表と位置付ける必要性もあると主張する。
有事の際に政府の権限強化や国会議員の任期延長などを認める、いわゆる「緊急事態条項」を憲法に盛り込むべきだとの議論もある。
伊波氏は「基本的人権などの制約を可能にするもので認められない。有事には現行法規で十分に対応可能」として反対する一方で、古謝氏は「基本的人権の制限につながりかねないとの懸念もある」とし、さらなる議論が必要だとの考えを示す。
(’22参院選取材班)
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