「本当は叫びたい」大規模クラスターの高齢者施設 入院困難でベッド密集、職員が総動員の現場


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施設内療養者のケアをするスタッフら=27日、本島中部(喜瀬守昭撮影)

 通常であれば、デイサービスとして利用し、テーブルや椅子が並ぶ1階フロアに、20床のベッドと点滴が密集し、新型コロナウイルスに感染した高齢者が横たわる。本島中部の有料老人ホームは、疲労感が漂っていた。現場のサポートに入る取締役の宮里秀美さん(57)は「(病院への)入院がふさわしいが、(全県的な急増で)難しい」と腹をくくる。大規模クラスターが発生し、施設内療養にあたる本島中部の高齢者施設を27日、取材した。

 15日に施設の利用者1人が発熱し、コロナの陽性が判明した。それ以降、毎日検査をする度に陽性者が続出。グループ3施設の利用者84人のうち59人に感染が膨らみ、1施設にほぼ全員を集約して痰(たん)の吸引などにあたる。

 日中はグループ内の別施設の利用者が同施設のデイサービスに通う。その際の接触で感染が一気に広まったとみられる。

 病院に搬送したくても病床が空かず、これまで入院できたのは3人のみだ。うち2人は近くの病院が見つからず、北部の病院に入院している。

 現在、酸素投与中の患者は12人。中でも酸素の値が戻らず状態が悪い患者が3人いる。酸素を送る透明のチューブを鼻に通す利用者らは静かだが、表情は苦しそうにも見える。同施設の看護師(33)は「昨年のデルタ株と似て重症化が早い感じがする」と危機感を示す。

 感染は職員にも広がり現場のスタッフ不足も深刻だ。職員約60人のうち、24人が感染した。感染を恐れた出勤拒否もあることから、実際に動ける人数は15人程度という。

 看護・介護スタッフ以外の事務員も総動員し現場でサポートにあたる。事務員(32)は「できることを尽くすしかない」と話し、防護服に着替えた。陽性の職員も無症状ならば出勤し、患者の療養にあたらざるを得ない状況だ。

 20日には1人がコロナで亡くなった。発症から1週間で急激に病状が悪化したという。その後も老衰や心筋梗塞が原因で2人が亡くなったが、死亡後に検査するとコロナ陽性が判明した。

 取締役の宮里さんは「ここはあくまで介護施設で医療現場ではない。職員は頑張っているが、本当は心で叫びたいはずだ」と話した。
 (中村優希)

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