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沖縄県と名護市、シュワブ内遺跡調査へ  新基地・美謝川整備に遅れも


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 新基地建設が進む沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブで、本年度内に県教育委員会と名護市教育委員会がそれぞれ別の場所の文化財調査に着手することが28日、分かった。文化財保護法に基づく調査。調査範囲は美謝川の整備ルートの一部などが含まれており、調査期間中は工事に着手できない。一方、沿岸部の埋め立て海域は調査範囲に入っていない。

 同基地内では9カ所が遺跡などに認定されている。遺構の現場保存などよりも施設建設が優先される状況が続いており、過去には沖縄防衛局が文化財調査の早期終了を求めたこともある。市教委担当者は「消失してしまう恐れがある場所から優先している状況だ」と説明する。

 県教委が調査するのは基地内の辺野古崎の大浦湾側にある「ヤニバマ遺物散布地」で、新基地建設に伴う美謝川付け替え工事の対象区域を含む。本年度末に矢板設置などに入り、来年度に発掘調査を実施予定だ。遺構などは写真などでの「記録保存」を予定するが、考古学上重要な発見は、保存について協議が必要になる可能性がある。

 同散布地では試掘調査で貝塚時代前期から近現代までの土器・磁器片などが出土していた。同遺跡では初の本調査となる。県教育庁文化財課は「法令に基づき、調査を進めていきたい」と本紙取材に答えた。

 一方、市教委が本調査を実施するのは基地内の「大浦崎収容所跡」の調査。米側に対し施設への立ち入りを求めており、9月までに許可が出る見通し。収容所跡では隊舎・厚生施設、橋梁(きょうりょう)などの建設が予定されていることから、調査に至った。

 収容所跡は沿岸部にある炊事場跡や桟橋遺構、収容所部分などで構成し、これまで踏査や試掘などの予備調査が実施された。市教委が今回着手するのは本体部分の大半。

 収容所は戦後、本部町、伊江村、今帰仁村の住民らが収容され、各出身地ごとに収容地区を形成した。今回は今帰仁村出身者の収容地区の北側半分で実施し、南側の調査は23年度以降になる。

 調査では、テント跡や陶磁器などの出土を調べる予定。収容所には遺骨が眠る可能性も指摘されているが、今回は遺骨調査は実施しない方針だ。担当者は「これまでも墓地などを試掘したが人骨は出てこなかった。出てくれば対応したい」と語った。

 調整状況について、沖縄防衛局は本紙取材に対し、ヤニバマ遺物散布地については「米側と調整している。見通しについて予断を持って答えることは控える」と答え、大浦崎収容所跡については「名護市教委から立ち入り申請がなされた事実はない」とした。
  (塚崎昇平、長嶺晃太朗)