【記者解説】岸田首相「聞く力」発揮されず 浜田氏再登板で自衛隊の南西シフト一層加速か 岸田改造内閣


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首相官邸

 第二次岸田改造内閣では米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を推進する沖縄関係閣僚の松野博一官房長官、林芳正外相が留任し、麻生内閣でも防衛相の経験がある浜田靖一氏が再登板し、沖縄との関わりが薄い岡田直樹氏が沖縄担当相に据えられた。「聞く力」を掲げて政権を発足させた岸田文雄首相。沖縄政策では岸田首相が理念とするその力は今後も発揮されず、なりを潜めそうだ。

 沖縄の日本復帰50年を前に、県出身の西銘恒三郎氏を登用し、県内では新たな沖縄振興に期待が膨らんだ。焦点となったのは2022年度の沖縄関係予算だ。21年12月に決まった当初予算は10年ぶりに3千億円台を割り込み、一括交付金は目安とされた1千億円台から大幅に減額され、制度創設以来最低額となった。

 新たに沖縄担当相となった岡田氏の手腕は未知数だが、来年度の沖縄関係予算の輪郭が見えてくる概算要求が目前に控えており、試金石となりそうだ。

 防衛政策でもこれまでは「聞く力」は発揮されなかった。県内での反発が根強い米軍普天間飛行場の移設問題は「辺野古移設が唯一の解決策」とする従来の政府方針を曲げることはなかった。浜田防衛相も従来方針を維持する方向だ。

 浜田氏は2009年7月に歴代防衛相として与那国町を初訪問した。中国の台頭を念頭に据えた南西防衛を一挙に加速させた分岐点となった。浜田氏の再登板により、自衛隊の南西シフトはさらに加速する可能性もある。米軍基地問題だけでなく、自衛隊配備計画でも今後の動向を注視する必要がありそうだ。
 (安里洋輔)