「傷ついても倒れない。平和の象徴」小学6年生が陶芸で表現、全国展で2位に 近所のヒンプンで知った沖縄戦の記憶を表現 糸満の新里采恩さん


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 【糸満】糸満市立喜屋武小学校6年の新里采恩(さいおん)さん(11)が制作した陶芸作品「弾の痕が残るヒンプン」がこのほど、全国こども陶芸展inかさまの小学4~6年生の部で茨城県知事賞を受賞し、2年連続で全国2位の評価を得た。近所のヒンプンをモデルにした作品で、「傷ついても倒れないヒンプンは、平和の象徴」と紹介する。

新里采恩さんの作品「弾の痕が残るヒンプン」(父・義和さん提供)

 采恩さんが全国子ども陶芸展に挑戦したのは3度目。沖縄をテーマに小学4年生から参加している。作品の題材を探して父・義和さんと近所を散歩している時、日頃から見ているヒンプンが采恩さんの目にとまった。近くで見ると、丸くえぐられたような穴が数カ所あった。義和さんの説明で沖縄戦当時の弾痕だと知り、衝撃を受けた。

 後にヒンプンには風や魔物から家を守る役割があると分かり、このヒンプンも「弾から家を守っていた」と考えるようになった。

 モデルのヒンプンは、石灰岩の石板数枚からなる。作品では筆やスポンジを使い分けたり、釉薬(ゆうやく)を垂らしたりして一枚一枚に表情を出した。ゴツゴツした岩肌は、石灰岩の上に粘土を押し付けて表現した。

作品のモデルとなったヒンプンの前で、自作のスケッチを見せる新里采恩さん=6日、糸満市喜屋武

 最高賞の文部科学大臣賞を目指して制作し、審査員からは「質感のクオリティーが高い」と評価された作品だったが、全国一には一歩届かなかった。采恩さんは「悔しい。次こそは文部科学大臣賞を取れるような作品を作りたい」と意気込む。作品は8月末まで茨城県陶芸美術館で展示されている。采恩さんは「沖縄には身近に戦争の痕がある。戦争のことに関心を持ってほしい」と願った。

(比嘉璃子)