対馬丸テーマにドキュメンタリー映画を製作 俳優・寿大さん、生き残った祖父の体験を基に 慰霊祭にも参加


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慰霊祭で手を合わせる寿大聡さん=22日午前、那覇市若狭の小桜の塔(ジャン松元撮影)

 対馬丸に甲板員として乗船し、一命を取り留めた故中島高男さん=埼玉県出身=の孫で俳優の寿大(じゅだい)聡さん(41)と、映画プロデューサーの葦澤恒(あしざわこう)さん(39)が対馬丸をテーマにしたドキュメンタリー映画の製作に取り組んでいる。2人は22日の慰霊祭にも参加した。対馬丸生存者へのインタビューも行い、当時の体験や思いに触れた。対馬丸撃沈から80周年となる2024年8月の公開を目指している。

 寿大さんの祖父の中島高男さんは17歳の時に甲板員として対馬丸に乗船し、撃沈後はいかだで海を漂流するも一命を取り留めた。中島さんの証言をまとめた書籍「満天の星」が今回製作するドキュメンタリー映画のタイトルになっている。

 祖父の体験をいつか作品にしようと決めていた寿大さん。ロシアとウクライナの戦闘で子どもらが犠牲になる様子が対馬丸事件と重なり、今こそ祖父の体験を発信する必要があると映画製作に踏み切った。

 8月12日から撮影を開始。対馬丸が沈没した鹿児島県悪石島付近の海上や沖縄県内の戦跡を訪れ、戦争への理解を深めながら映画を作っている。寿大さんは「国家の利権のための戦争に子どもを巻き込んではいけない。対馬丸を通して世界に命の大切さを伝えたい」と思いを語った。

 葦澤さんは「体験者がいなくなった後の伝え方を見つけないといけない。映画という手段で過去の歴史と向き合いながら未来への推進力を持った作品にしたい」と述べた。
 (赤嶺玲子)