沖縄県の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(座長・国吉秀樹中部保健所長)が27日、県庁で開かれた。感染者の発生届を全国一律で高齢者など入院リスクが高い人に限定する政府の方針について、現時点では判断せずに慎重に検討を続ける必要があるとの意見でまとまった。
県は29日に対策本部会議を開く予定。政府は同日に発生届の限定化に移行する自治体からの受け付けを始めるが、現時点で県は申請を見送るとみられる。
会議では、発熱外来のクリニックでは発生届の事務作業に負担感が続くものの、那覇市保健所や検査業務を受託する医師会では業務の効率化で、現在の感染状況でも届け出業務は逼迫(ひっぱく)していないという。県ワクチン検査・推進課によると、民間無料検査所の提携医療機関では、新規感染者が4千人以上の頃は発生届が4、5日遅れることもあったが、感染者の減少で改善されているという。
委員からは限定化のデメリットとして、新規感染者の8割近くが届け出対象外となるため、行動自粛の呼び掛けが浸透せず、水面下で流行が拡大する懸念が上がった。感染しても発生届がない場合は県対策本部による受診や入院調整の対象とならないため、個別に対応する医療現場の負担が増す可能性も示された。県内では多くの社会福祉施設で感染が続くが、届け出対象外の職員が感染を持ち込んだ場合、県対策本部で迅速に覚知(かくち)できず、医療支援が遅れる恐れもあるという。
全数把握については、活動的な若者の感染動向を把握し、対策を講じてきたメリットがあるとの意見もあり、複数の委員からは届け出対象の限定化ではなく、入力項目の省略によって負担軽減を図る案も示された。
(嘉陽拓也)