「海面付近はお湯のよう…」宮古と石垣でサンゴ白化、高水温で死滅の危機 排水で藻が増殖、成長阻害も 環境や観光関係者ら回復望む声


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 サンゴの白化が進む石垣島と宮古島。宮古島では既に白化が確認されている水深よりもさらに深い場所でも、白っぽくなっているサンゴが確認されており、危機感が広がる。石垣島では、成長を阻害する藻で覆われた個体も。これを取り除く地道な活動を続ける人もいる。環境ガイドや観光業者らはサンゴの回復を望んでいる。
 

宮古島 全域で白化か 深場も進行

 【宮古島】宮古島市海業センターによると、サンゴ白化は8月に入って島周辺の沿岸部で目立つようになった。これまでにセンター職員や漁業者、マリン事業者らが島の複数地点で確認した。同センター主任技師の島田剛さんは「海水温上昇が続いており、海面付近はお湯のような状態になっている。状況を考えると島全域で白化が進んでいる可能性が高い」と指摘した。

宮古島沖の白化したサンゴ=宮古島市平良狩俣の市海業センター沖約350メートル、水深約3メートルの海中(市海業センター提供)

 島田さんによると、8月以降、宮古島南側に位置する上野地域や北側の真謝、北東部の狩俣などの沿岸域で白化したサンゴが確認された。

 市海業センターは8月22日に市狩俣の海を調査した。水深6メートル以下では8~9割のサンゴが白化していた。一部では死に始めている状況だったという。島田さんは「水深が浅いところはほぼ真っ白になっている。7、8メートルの深い場所でも白くなったサンゴが出てきていた」と説明した。

 要因について島田さんは「海水温の上昇だと考えられる。今年は台風が一度も接近していない」と指摘した上で「このまま高水温が続くと既に白化しているサンゴは死滅してしまう。さらに深場でも白化が進行する」と危機感を示した。

(佐野真慈)

 

石垣 藻が成長阻害 除去活動も

 【石垣】石垣島でサンゴ学習の推進に取り組む「わくわくサンゴ石垣島」の大堀則子代表によると、白化は7月末の大潮の頃に進んだ。大堀さん撮影の写真では、白化に加えて藻で覆われている様子が確認できる。

白化が進むサンゴ。表面は藻のようなもので覆われている=4日、石垣市の米原海岸(大堀則子さん提供)

 琉球大の中村崇准教授によると、サンゴ礁の海は元々、海中の栄養分が少ない。陸上で使用された肥料や畜産廃水などが降雨とともに海に流れ出すことで、海中の栄養分が高まり藻の増殖を促すという。その結果、サンゴの成長を抑え生存を脅かす場合があるという。

 八重山ダイビング協会の環境対策委員長で、島内でダイビングショップを営む寺本晃洋さん(42)は、白化したサンゴに藻が付いているのを見かけたときには取り除いているという。寺本さんは「無駄な抵抗かもしれないが、できる限りやっている」と話す。

 島内有数の観光地、川平湾でグラスボートを運航する会社の担当者は、現時点で、サンゴの白化が業務に影響を与えていることはないと明かす。だが「このまま白化が進めば、お客さんを案内できなくなるかもしれない。元のきれいなサンゴに戻ってほしい」と回復を願っている。

(西銘研志郎)

 


【関連記事】

沖縄のサンゴ白化、過去最悪レベルも 石垣、宮古島で深刻 台風接近少なく海水温下がらず

【識者談話】数世代先を見据えた持続的なサンゴ保全策を 中村崇・琉大准教授(サンゴ礁生物生態生理学)

【動画】白い夏 ~シャコガイの白化~ <沖縄・海の生き物たち Vol. 55>