【識者談話】数世代先を見据えた持続的なサンゴ保全策を 中村崇・琉大准教授(サンゴ礁生物生態生理学)


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中村崇 琉球大学准教授

 サンゴ礁は数百年、数千年単位で作り出され、多様な生物が育まれる生態系の基礎となるが、この20~30年で世界的に衰退しつつある。一度、サンゴ礁生態系のバランスが失われれば、元に戻すことは難しい。サンゴが減る速度と自然回復する速度のバランスが完全に逆転している。沖縄周辺では白化から回復できずに、死滅したままの海域も出てくるだろう。

 恩納村は、サンゴ礁保全に関する世界でもトップレベルの取り組みが進んでいるが、県全体での取り組みが必要だ。海外には、政策立案にサイエンティフィックアドバイザー(助言や政策立案を行う科学者)の役職がある。島の規模が沖縄と同程度のパラオでは、科学的な根拠を基に、観光客数増大よりもサンゴ礁の長期的保全と利用にかじを切り替え、観光客からの環境税を原資とした保全策に力を入れている。

 陸上からのさまざまな流入物をできるだけ少なくするなどの取り組みで、サンゴへのストレスを減らす対策はできる。県は短期的振興はもとより、数世代先を見据えた持続的視点での政策をしてほしい。海で起きるほとんどの現象は陸に生きるわれわれの活動が原因となっている。サンゴをいかに守り育てるか、という視点が大事だ。

(サンゴ礁生物生態生理学)

 


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