【イラストと解説】どんな仕事?報酬は? 議員の姿を紹介【統一地方選】


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎

 9月11日を中心に、県内29市町村で実施される議会議員選挙。住民の代表として議会で市町村行政を監視し、私たちが暮らしやすいまちづくりを目指す。41市町村の議員数は632人(2022年8月現在)。各市町村議会事務局へのアンケートなどを基に議員の役割や活動のほか、報酬、政務活動費など議員の姿を紹介する。 (’22統一地方選取材班)

 

 

■議員活動 年4回の定例会、臨時会が柱

 議員の活動の柱は、年4回の定例会と必要に応じ開催する臨時会だ。当局側が提案する予算案や条例案を審議し議決するほか、一般質問を通じ行政全般をチェックする。県や国に地域の考えを伝える決議・意見書の議決、住民らから届く請願や陳情の審議・採択と担う役割は大きい。
 取り扱う問題が多岐にわたるため、分野別の委員会で審議し、結果を本会議で議決することも多い。会期以外は地域の課題の調査や住民の要望について聞き取りを行う。先進地視察に行くこともある。

 

■議員の一般質問 小規模議会で少なく

 市町村長や職員に議員が直接質問し、回答を得る一般質問。内容は身近な施策の進捗(しんちょく)状況から首長の政治理念に至るまで幅広く、自由に質問できる。回答は正式に記録される。

 本会議場で実施され、議員にとっては貴重な機会となる。年4回の定例会で質問できるが、小規模議会では質問に立つ議員が少ない傾向がある。2021年は竹富町議会(定数12)の6月定例会で一般質問がゼロだった。

 議員は条例案を提案できる。21年に議員が提案する条例案がなかったのは41議会中33議会だった。

 

■4期以上の議員 5町村で半数超

 ことし7月時点で、当選が4期以上の議員が5割以上を占めるのは5町村議会だった。渡名喜村議会(定数6)は4期以上の議員が5人で、83%に上る。4期以上の議員がちょうど半分を占めるのが南風原(定数16)、嘉手納(同16)、伊江(同10)、国頭(同10)の4町村議会。41市町村議会すべてに4期以上の議員が1人以上在籍している。

 

 

■議員の1カ月の報酬は? 最高は那覇58.6万円

 議員の報酬は市町村によって差がある。最も高いのは那覇市の58万6千円、最も低いのは渡嘉敷村と渡名喜村の16万2千円だ。財政事情が厳しい自治体では報酬額も低く、農業などと兼業する議員も少なくない。

 費用弁償は、本会議や委員会に出席する際の交通費などとして支給される。県内では29市町村が支給し、1日当たりの金額を設定したり距離に応じ算出したりしている。

 24市町村が、政策の調査研究などに必要な経費として政務活動費を支給している。22年7月現在、那覇市や糸満市、南風原町、与那原町など7市2町が収支や使途をホームページで公開している。18年の本紙調査時は那覇市のみだったが、拡大した。宜野座村など4町村は「議会広報紙に掲載」、名護市など11市町村は「請求があれば公開」と回答した。

 

 

■議員と首長 対等な関係

 議員と首長は住民の直接選挙で選ばれる。議員で構成する議会と首長は対等な関係にある。

 首長、教育委員会などの執行機関を監視し、疑問点の指摘や提案などを通して行政が適正に運営されるようにするのが議会の役割だ。議会は執行機関が提出する予算案や条例案などを議会で審議し、最終的に決定する。

 

■議会事務局の女性職員数 全体の32.8%、役職者は20人  

 2022年現在、市町村議会の運営を支える事務局などで勤務する職員は計189人いる。女性職員は全体の32.8%、62人。正規職員(155人)に占める女性は25.2%、39人。非正規(34人)は67.6%、23人。  粟国村議会事務局の職員は女性局長1人。南風原町は4人中3人が女性職員だった。次長、課長などの役職に就く女性は全体で20人。41市町村で女性事務局長は那覇、今帰仁、粟国の3市村のみだった。

 

 

■議会のネット中継 22市町村で公開

 議場に足を運べなくても、インターネット環境があれば気軽に議会を視聴できる。琉球新報の調べでは7月現在、県内22市町村がホームページなどで議会の中継を公開している。2018年の調査時より4市町村増えた。

 自宅や外出先で議案審議などを視聴できるネット中継は、議会や行政の動きを迅速に多くの住民に伝えられる。

 八重瀬町など9町村は公共施設や役場庁舎内のみで中継を公開する。西原町は録画、久米島町は録音を公開している。嘉手納町や大宜味村など9町村は「設備が未整備」などの理由で公開していない。

 

 

 

■議会の傍聴 民主主義を感じる場

 市町村議会は基本的に誰でも傍聴できる。傍聴するには、議場に入る前に氏名や住所の記入を求める議会が多い。質問を事前に議会のホームページで確認できる地域もある。

 それぞれの分野に応じて「委員会」を設置する議会もある。委員会は本会議に入る前の段階で詳細な審議をする。委員会の傍聴は氏名などの記入に加えて、委員長の許可が必要な場合や、非公開のところもある。

 市町村議会は、民主主義を間近で感じることができる場所だ。ぜひ議会に足を運んでみよう。

 

【識者談話】多様な選び方の保障を 久保慶明・関西学院大学教授(政治学)

久保慶明教授

 地方選挙は地域の代表を選ぶための仕組み。候補者の掲げる政策を有権者が吟味し投票することは重要だ。政策は住民の生活を左右する。一方で候補者の選び方は政策だけではない。地縁、血縁、人柄を重視して投票する人もいる。特に地方議会選挙は一つの選挙区から複数の当選者を出す大選挙区制を採るため、政策が似たり寄ったりになる場合もあり、地縁や血縁で選ぶこともあり得るだろう。多様な選び方が尊重され保障されるべきだ。

 選挙では、現職の場合はこれまでどのような議会活動をしてきたのか、新人の場合はどのような経歴を持つ人物なのか積極的に有権者に示す必要がある。メディアによる報道のほか、選挙管理委員会が発行する選挙公報も重要だ。発行していない自治体もあるが、有権者の投票環境整備の一環として発行することが望ましい。当選後は一般質問などの議会活動を積極的に広報すべきだ。

 自治体の主導権は執行機関の首長が握っているように見えるが、議会の影響力を軽視することはできない。議会は行政を監視・チェックする役割を担うほか、首長が出す条例案、予算案などを審議する役割を担う。

 首長選挙の候補者選考に関わる上、議員自身が首長に推挙される場合もある。県レベルの選挙や国政選挙で候補者を支援することも少なくない。今回、多くの自治体が知事選と同日の投開票となる。選挙の結果が今後の県政や国政に影響力を及ぼすと考えられる。

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