【沖縄】「白いオタマジャクシが庭にいるが、珍しいのか知りたい」。沖縄市比屋根の幸地夕夏さん(48)から1本の電話があった。記者が訪ねると、庭にあるおけの中で白い体をしたオタマジャクシが黒いオタマジャクシに混ざって泳いでいる。「最初は2匹だったが、観察しているうちにどんどん増えていって、どうしたらいいのか…。いつか白いカエルになるのでしょうか」。
記者は沖縄市立郷土博物館の、自然に詳しい刀禰(とね)浩一学芸員に協力を依頼した。
刀禰学芸員によると、白いオタマジャクシの正体は特定外来生物に指定されている「シロアゴガエル」の色素がないアルビノ個体だという。シロアゴガエルは東南アジアなどに自然分布するが、1964年に沖縄本島中部で初めて発見された。米軍の軍事物資の輸送に紛れて持ち込まれたとされ、沖縄島全域に広がった。幸地さん宅のおけにすみ着いたオタマジャクシは、3割が白い個体だった。刀禰学芸員は「比屋根のような孤立した森林がある地域では、個体の近親交配が進む。遺伝的な多様性が落ちて、アルビノ個体が増えたのではないか」と分析する。
白いオタマジャクシは、カエルに成長しても白いままで、本来の褐色とは違うシロアゴガエルになるという。
特殊な経緯で白いオタマジャクシが大量発生した今回のケース。刀禰学芸員は「珍しいからといって人にあげたりしないで。特定外来生物は『入れない・捨てない・広げない』が大原則だ」と注意を呼び掛ける。
特定外来生物は生態系、人体、経済活動などに影響する可能性がある生物が指定される。シロアゴガエルが繁殖してしまうと、同じ生活様式で暮らす在来の「オキナワアオガエル」への影響が懸念されるという。外来種が定着した場合、在来種との個体数が逆転する可能性もあるという。
刀禰学芸員は「土地土地にはそこにしかいない生物がいて、土地の歴史を語ってくれる。自然生態系を失うと、文化も失うかもしれない」と話し、地域の生態系を守るためにも特定外来生物への注意を呼びかけた。
(石井恵理菜)