「旅先納税」全国に拡大中 南城市も導入 旅前や旅行中にふるさと納税、返礼は電子商品券


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 旅行先にふるさと納税をすると、返礼品として電子商品券がもらえる「旅先納税」を導入する自治体が全国に広がりつつある。肉類や魚介類など“目玉の返礼品”の少ない自治体が「観光資源を活用できないか」と考えたのがきっかけ。商品券は使える用途が幅広く、新型コロナウイルス禍で大きな打撃を受けた観光回復の「起爆剤に」との期待が高まっている。

 旅先納税はスマートフォンなどで旅行先の自治体の専用サイトにアクセスし、クレジットカードで寄付をすると現地で使える電子商品券がもらえる仕組み。商品券を使う際はサイト上で支払額を入力し画面を店側に提示する。店側がスタンプ型の決済装置で画面を押せば支払いは完了。1円単位から使用可能だ。

 画面に表示されたQRコードで決済する方法を採用する自治体もある。

 北海道の北端に浮かぶ人気の観光地、利尻島にある利尻富士町は6月に導入した。寄付額は5千円からで、その3割相当の商品券がもらえる。

カフェ「ポルト・コーヒー」に張られた旅先納税のポスター=7月、北海道利尻富士町

 町会計課の熊谷洋人課長(60)は「観光地に向いている方法だと感じた」とした上で「商品券の利点は自由に組み合わせて使えること。レジャーの体験料などにも使える」と話す。同町を旅行中に利用した30代男性は「寄付してすぐに使えるのがいい」。導入から2カ月間での寄付額は計約60万円に上ったという。

 商品券は町のホテルや飲食店、土産物屋に加え、日帰り温泉、レンタカー、ガイドセンターなど35カ所以上で使用可能。その一つ、稚内市などとの間を結ぶフェリーが発着する鴛泊港周辺にあるカフェ「ポルト・コーヒー」店主の白戸浩明さん(54)は「電子通貨も扱っているので難しいと感じたことはない。スタンプを押すだけなので、むしろ楽だ」と評価した。

 旅先納税で使うシステムを開発したのは電子ギフトサービスを提供するギフティ(東京)。「ふるさと納税を増やしたいが、返礼品になる1次産品は多くない。だけど観光資源はたくさんある」と自治体から相談を受けたことが契機だった。

 同社によると、サービスを開始した2019年に岡山県瀬戸内市が全国で初めて導入。北海道猿払村や山梨県笛吹市、沖縄県南城市なども加わり、今年9月2日現在で4道県11市町村が利用している。新型コロナの感染拡大で落ち込んだ観光客の回復を見据えて導入を検討する自治体から問い合わせが相次いでおり、今年末までに自治体数は倍増する見通し。

 ギフティ広報担当の中野綾佳さん(42)は「ふるさと納税を利用している人は対象者の1割ほどで伸びしろが大きい」と分析。「旅行前や旅行中の観光地への寄付が広く受け入れられれば、地域の活性化につながる」と期待を込めた。

(共同通信)