投票率が低い若い世代に投票を呼び掛けるなど、投票を促す取り組みが進む中、聴覚障がい者にとっては投票したくても候補者の情報不足で投票しづらい状況がある。就労継続支援B型事業所みみの木の管理者で聴覚障がいがある来間正人さんは「誰を選んだらいいか分からず白紙で投票したこともある」と話す。当事者からは、候補者の演説や投票所で手話通訳を導入してほしいとの声が上がる。
来間さんは選挙に関する情報を、家族や周囲の人から聞いたり、手話通訳がつく政見放送を見たりして収集する。直接候補者の訴えを聞く機会はほとんどない。「人づてよりは自分で情報を直接、候補者から(手に)入れたい」という思いから「候補者の演説に手話通訳をつけてほしい」と話した。
特に市町村議選など、数十人の候補者がいると「まったく情報がなく分からない」と話す。一部の候補者から届くチラシなどを参考にしているが「20~30%くらいの情報しか収集できず、判断するには足りない」と情報の不足を指摘した。
文章を読んだり、理解したりすることが苦手な人もいる。手話通訳の動画に飛べるようなQRコードを政策を訴える文書と一緒に添付するなど、手話通訳の拡充を求めた。
投票所でも手話の普及を提案する。聴覚の障がいは見た目で分からないことも多く、曖昧な指示をされ困った経験がある。「選挙に関する限定的かつ簡単な手話でかまわない。担当の人に手話の研修などを実施してほしい」と求める。簡単な手話ができれば手話通訳者がいなくても「安心して会場に行ける」と話した。
視覚と聴覚に重複して障がいがある人は、手話をしている手に触れて手話を理解する「触手話」でコミュニケーションをとる。そのため「筆談」よりも「一番良いのは手話だ」と強く求めた。
投票所の入場券などに一筆でも「支援できます」と書いてあると「安心して投票に行ける」。「簡単なことでも大きな変化になる」と聴覚障がい者が選挙に行きやすい取り組みを願った。
(金盛文香)