感染で営業停止、職員の離職…介護人手不足、一気に コロナで問題顕在、妙手なく


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沖縄県医療ソーシャルワーカー協会などが知事選立候補者に提出した公開質問状

 新型コロナウイルスの新規感染者は減少傾向にあるが、沖縄県内の高齢者施設や障がい者施設では施設内感染が続いている。クラスター(感染者集団)により職員が離職したり、営業停止に伴う施設の収入減につながったりするケースもあり、コロナ禍によって、元々あった深刻な介護人材不足の課題が前倒しされた様相となっている。抜本的な解決策が見い出せない中、関連団体は県知事選挙で再選した玉城デニー知事の手腕にも注目する。

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 施設内で新型コロナのクラスター(感染者集団)が起きた高齢者や障がい者施設を対象に、応援人材を派遣するソーシャルアクション(浦添市)の崎濱隼次代表社員によると、小規模施設ほど経営面の打撃は大きく、疲弊した職員の離職も起きているという。

 沖縄労働局によると、介護関係職業の有効求人倍率は7月現在2・43倍と高止まりが続く。人材確保が難航する施設もあり、崎濱代表社員は「クラスターの応援派遣とは別に、通常の人材派遣を相談されることもある」と明かす。

 県老人福祉計画・第8期県介護保険事業支援計画によると、県内の高齢者人口は2019年10月段階で32万2千人で高齢化率22・2%の超高齢社会に入った。団塊の世代(1947~49年生まれ)が75歳以上となる2025年には高齢化率は24・6%、40年には30・0%になると見込まれている。

 しかし、介護従事者は足りず、人員不足は25年に2045人、40年には9294人と推計されている。介護労働安定センターの21年度介護労働実態調査報告にも現れており、介護事業所の職員不足感は63・7%となっている。

 こうした事態に、県医療ソーシャルワーカー協会などは、県知事選挙中に立候補者に対して社会福祉施設の人手不足などについて問う公開質問状を提出した。加盟団体の沖縄ソーシャルワーカー協会の保良昌徳副会長はその背景について「給与や勤務地にもよるが、求人募集をしても反応が弱い」と語り、人材不足への危機感を示す。

 介護業界を目指す若者の減少も追い打ちをかける。20年度は県内の高校で介護人材を育成する学科の定員充足率は67%、介護福祉士養成の専門学校では定員の45%にとどまる。保良副会長は「高齢化の波が避けられない以上、介護業界はより重要になる。妙手がないのも理解しているが、行政側としても中学・高校レベルで福祉分野の教育にも力を入れるとともに、奨学金などの支援もより充実してほしい」と語った。
 (嘉陽拓也)

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