16年の墜落事故後も騒音激化 変わらぬ現状に周囲の住民「うんざり」 <欠陥機今も~オスプレイ配備10年~>上続き


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名護市安部の海岸に墜落し、大破したMV22オスプレイ=2016年12月14日午前1時35分ごろ

オスプレイ事故後の飛行に二重基準か 海外では停止、県内では継続 配備前の危険性指摘、現実に<欠陥機今も~オスプレイ配備10年~>上

 

 新基地建設が進む名護市の大浦湾から北向けに10分ほど車を走らせると、市安部の集落がある。フクギなどの木が立ち並び、海岸から風が吹き抜けるのどかな地域に2016年12月13日夜、衝撃が走った。県内に配備されたMV22オスプレイが、集落から約800メートル離れた海岸に墜落した。

 墜落事故があった日の午後9時ごろ、川田正一さん(71)は深夜のイザリ漁に備えて安部区内の自宅で休んでいた。集落上空を米軍機が頻繁に低空飛行しており、海岸に出ると機体はサーチライトを海面に向けていた。その異常な光景に「これは訓練ではない」と感じたという。

 川田さんは「慣れ親しんだ海に墜落した様子が頭から離れない。オスプレイが上空を飛ぶたびに思い出し『ばか野郎』と叫びたくなる。できることならもう見たくない」と声を落とす。

 オスプレイの配備から10年。区民の男性は「欠陥が明らかになってもオスプレイは飛び続けている。また墜落するのではないか」と懸念する。海岸を散歩していた60代女性は「米軍機は墜落後も集落周辺を飛行している」と語る。事故の衝撃が今も区民の心に暗い影を落とす中、集落の騒音は増加している。

 名護市は10年10月から安部公民館の屋上に騒音測定器を設置し、騒音データをまとめてきた。市によると11年度から21年度にかけて、名護市安部で測定した環境基準値(62デシベル)を超える騒音回数は、21年度の1349回が最多だった。11年度の328回から約4倍となった。

 前出の女性は「騒音が前よりひどくなっている。もっと海側を飛べばいいのに、米軍機は集落近くを飛ぼうとする。集落を飛行訓練の目標物にしているのだろう」と話す。

 市の調査では、騒々しい工場内に相当する90デシベル以上もたびたび観測される。事故後も米軍が区民の生活を顧みることはなく、むしろ被害はひどくなった。21年度の騒音について、市は「最近は市街地上空の飛行訓練も多く見られ、市長もその都度、関係閣僚に負担軽減を訴えている」とした。

 現在、オスプレイなどの米軍機は東村高江や伊江村、宜野座村城原にある米軍基地のヘリパッドや飛行場を頻繁に行き来している。辺野古の新基地が完成すると、飛行ルートとなる安部の騒音被害や墜落のリスクがさらに高まることが危惧される。

 墜落事故や新基地建設など、基地問題に振り回されてきた区民には疲れの色がにじむ。60代男性は「大きな事件事故や選挙のたびに基地問題が取り上げられるが、何度抗議しても現状は変わらない。もううんざりだ」と言い捨てた。
(友寄開)