【深掘り】北朝鮮のミサイル発射、米軍基地が集中する沖縄への影響は?


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米軍嘉手納基地(資料写真)

 北朝鮮から弾道ミサイルが発射され、青森県上空を通過し、岩手県から東へ約3200キロの排他的経済水域(EEZ)外に落下した。韓国軍よると、発射されたのは中距離弾道ミサイルとみられる。約20分間で約4600キロ飛行したとみられ、米軍の重要拠点で、戦略爆撃機などが展開するアンダーセン空軍基地があるグアムを射程に収める狙いがあるとの見方が出ている。「米軍基地」を射程範囲に入れることで、米側に揺さぶりを掛けた形だ。基地が集中する沖縄も例外ではない。

 2012年、16年には「人工衛星」と称した飛翔体が沖縄など南西諸島の上空を通過し、フィリピン沖に落下させたこともあった。北朝鮮が核開発に力を注ぐ中、米軍基地が集中する沖縄が米朝の駆け引きに巻き込まれ、安全が脅かされる危うい要素をはらんでいる。

青森通過「たまたま」

 米軍嘉手納基地では4日午前、電子情報収集機や電子偵察機が離陸するなど動きがみられた。同基地に常駐するオファット空軍基地所属の電子情報収集機RC135Vリベットジョイント1機、ワシントン州ウィドビーアイランド海軍航空基地所属のEP3E電子偵察機1機が離陸。北朝鮮のミサイル発射を受けた警戒監視とみられる。

 ある防衛省関係者は北朝鮮の狙いについて「核体制を整えて相手国に攻撃をとどまらせることにある」と指摘。だからこそ米グアム領までミサイルが届く飛距離を誇示しつつ、緊張を高めすぎないようグアム方向を避けたと分析した。

 その上で青森県上空を通過したのは「たまたまだろう」とした。グアム方向を避けるには「北海道や東北の方面か、南西諸島の方面が選択肢となる。能力を示すために今後は沖縄方面に発射してくる可能性もある」との見通しを語った。

「抑止力」に温度差

 「わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している。在日米軍が日本および地域の安全保障に貢献しており、その安定的な運用のためには地元の皆さまの理解と協力が不可欠だ」。4日、2期目のあいさつ回りで訪れた玉城デニー知事に対し、林芳正外相は同日朝に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことに触れつつ、こう強調した。在沖米軍の負担軽減を進める考えを示しつつ、「抑止力」としての米軍駐留に県側の理解を求めた形となった。

 一方、玉城知事は会談の中で、林氏に対して北朝鮮のミサイルを巡り、国際社会と緊密に連携し、外交努力を続けることなどを要請。林氏の発言と、基地負担軽減を求める県側の温度差が際立った。

(池田哲平、名嘉一心、明真南斗)