【識者談話】ひろゆき氏の発言、沖縄への差別扇動 安田浩一氏(ノンフィクションライター)


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 発言者の意図とは無関係に、差別か否かは文脈で判断するしかない。今回のひろゆき氏の発言は沖縄の人々への明確な差別で、沖縄への差別扇動として十分成立する言葉だ。

 根底に「沖縄の人々の特殊な言葉なので意思が通じにくい」とさげすみも透けて見える。文脈から方言札の歴史もちらつく。沖縄の人々が言葉に対して何を感じ、どのような歴史を積み重ねてきたか、まるで理解がない。差別と捉えるのは自然なことだ。

 普天間飛行場についても、手あかの付いたデマを繰り返している。何度も否定・検証されたことだが、ネット上でいまだに流布し、影響力のある人物が拡散していることに憤りも覚える。現在の飛行場周辺は、沖縄戦前に「何もなかった」のではなく「何もかもがあり」、約9千人の営みがあった。火事場泥棒的に米軍が土地を接収し、基地にした歴史を認識していない。

 基地問題の本質は日本社会が抱える沖縄への冷酷さ、偏見、差別だ。当事者側は歴史的経緯を説明するしんどい作業をしながら、語らなくてはならない。楽に表面的な現象をあげつらって「論破」し、解決を装う一部メディアの方向性にはへきえきする。

 日本社会の沖縄に対する視点・視線が表出した。「ひろゆき氏問題」で片付けてはならない。