発達障がいの当事者向け「薬はじめてガイド」増刷へ 通院や服薬の情報まとめ クラウドファインディングで支援募る 沖縄出身の筑波大生ら


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プロジェクトに取り組む筑波大学の仲田真理子助教(右)と3年の長濱奈甘乃さん(提供)

 筑波大学の仲田真理子助教(35)とうるま市出身で心理学類3年の長濱奈甘乃(なあの)さん(21)が、発達障がい当事者向けに通院や服薬の情報をまとめた冊子「薬はじめてガイド」の増刷のため、クラウドファンディングを始めた。31日まで。2人は発達障がいの当事者。意思疎通の難しさや薬の副作用で悩んだ経験から「当事者の主体的な選択が尊重される未来になってほしい」と願う。

 筑波大の行動神経内分泌学研究室に所属する仲田さんは、20代で注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症と診断された。他の当事者と交流する中で、薬の必要性や医師とのコミュニケーションに関する質問を多く受けた。いざ説明しようにも資料の多くは家族や支援者用で、当事者向けはなかった。

 科学的知見に基づいた薬や医療の情報をまとめたガイドは(1)服薬するかどうか決める際に知りたいこと(2)薬との上手な付き合い方(3)医師とのコミュニケーション―の3部構成。当事者が初めて病院に行く時や、通院・服薬で不安になった時に読むことを想定した。

 昨年4月、ガイド発行に向けて発達障がいの専門医らとチームを発足。11月に発行し、送料を含め無料で配布している。既に約5千部を配布し、今後県内でも広めたい考えで、新たに1万部の発行が目標だ。

 長濱さんは本年度からチームに加わった。パニック障害とADHDの診断を受けたのは大学1年生の頃。薬が合わず動悸(どうき)や発熱で苦しんだ。医師に副作用の悩みをうまく伝えられず、感覚過敏がある自分自身の感覚にも不信感が募った。「当事者向けのガイドで救われる人がたくさんいる」と普及活動に力を入れる。

 ガイドはチームが運営するホームページでダウンロード可能で、音声で聞くこともできる。一方、電子機器の操作が苦手な当事者もいるため、仲田さんは「いつでも読める冊子も大切。当事者に向けた情報が得られるように社会を変えたい」と語る。長濱さんは「生まれ育った沖縄に還元したい。ぜひ支援いただきたい」と呼び掛けた。

 目標金額は180万円で、来年度にかけての冊子の印刷費や活動費に当てる。詳細や支援はhttps://readyfor.jp/projects/kuraciloから。
 (吉田早希)