【記者解説】最大規模の軍事演習、南西諸島への影響は 有事想定、日米一体化色濃く


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防衛省(資料写真)

 防衛省が発表した日米共同統合訓練「キーン・ソード23」は、南西シフトを進める自衛隊が米軍と一体となって軍事行動を展開する有事想定が色濃く表れている。実戦に近い大規模演習は沖縄の基地被害を激化させるだけでなく、日米と中国が示威行動を繰り返す最前線として沖縄周辺の軍事的な緊張を一層高めることになる。

 台頭する中国軍へのけん制を念頭に、米海兵隊が進める島しょ作戦「遠征前方基地作戦(EABO)」を踏まえた演習となる。沖縄のほか、鹿児島県の奄美大島では自衛隊の地対艦誘導弾と米軍の高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)を展開。徳之島では、南西諸島で初めて日米のオスプレイが連携して訓練する。

 県管理の中城湾港などの使用は、有事の際に民間施設を使用する予行演習といえる。一方、最新鋭の装輪装甲車「16式機動戦闘車」(MCV)を中城港湾に搬入する計画もあったが、空輸で那覇基地に持ち込むことに変更した。期間中の運用も那覇基地内にとどめ、基地間移動はしない。

 戦車や武器が県民の目に触れて反発を招くことを回避した形だが、自衛隊関係者は「南西諸島を守るために(MCVを)導入したのに、持ち込めければ意味がない」と不満を漏らす。

 浜田靖一防衛相は「自衛隊の輸送能力向上のため、自治体が管理する港湾を含めて訓練を行うことが必要だ」と語り、民間施設を使う方針は明確に堅持している。防衛省としては今後、沖縄本島のほか離島の港や空港の使用拡大も模索する意向だ。

(明真南斗)


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