老舗洋菓子店の閉店の危機、熱烈なファンが救う 入居ビルが老朽化…移転へ募金呼び掛け再出発 那覇


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「アベニア」の再出発を喜ぶ店主の知花園子さん(右)と旧店舗に31年勤めた元従業員の東海林恒子さん=19日、那覇市三原のアベニア

 【那覇】那覇市で31年間愛されてきた老舗洋菓子店「アベニア」が16日、老朽化に伴う移転を経て約7カ月ぶりにリニューアルオープンした。午前11時の開店から20人余りの客が訪れ、準備していた菓子は午後2時ごろに完売となった。落語イベンターで店主の知花園子さん(47)は「お年寄りも、ちびっこも気軽に来られるような店にしたい」と語った。

 一度は閉店の危機にあった店を、熱烈なファンが復活させた。知花さんは、旧店舗に週4日通うほどのファンだった。ツイッターで店の情報を発信するうちに店のファンが増え、約2年前に店からスカウトされてアルバイトとして働くようになった。

開店初日、最後の客に先代からおなじみのバナナケーキを手渡す店主の知花園子さん(左)

 同じころ、旧店主の塩川優さんからアベニアの入居ビルが老朽化し、取り壊されることを聞いた。「取り壊しがなければ、店を続けるんだけどね」。そう話す塩川さんの思いに触れ、知花さんは店舗移転のためにツイッターで募金への協力を呼びかけた。「永遠に続きますように」などと願い、県内外、遠くはスイスから寄付金が贈られてきた。

 「店の名前を残してくれて本当に感謝だ」。元従業員の東海林恒子さんも、店の再出発を喜ぶ。「塩川さんや地域の人がよくしてくれたから、前の店で31年間勤めることができた。新しい店もみんなに愛されるようになってほしい」と話した。

 先代の塩川さんは新店舗で、菓子作りに専念している。開店初日、店頭にはエンジェルケーキやバナナケーキなど、おなじみのお菓子が並んだ。ツイッターで開店を知った客が県外からも訪れ、一時は20人超の列ができるほどにぎわった。

 この日最後のバナナケーキを買ったのは、那覇市の52歳の女性。。「くどくなくて優しい感じが好き。太らないように気を付けないといけない」と話し、笑顔で店を去って行った。
 (比嘉璃子)