沖縄電力(本永浩之社長)が、1980年以来となる電気料金の値上げ改定に踏み切る検討に入ると発表した。家庭向けを含む全ての電気料金が対象となる。物価高や円安の影響を既に受けている家計や企業の経済活動に、さらに深刻な影響が及ぶのは避けられない。
電気料金はこれまでも、燃料価格の上昇分を反映する「燃料費調整制度」(燃調)や再エネ賦課金の導入などにより変動してきた。今回はそうした料金変動とは異なり、電力供給に必要なコストを見直して総原価を「洗い替え」するもので、国の認可が必要になる抜本的な料金改定となる。
沖電は年内にも値上げの具体的な内容を固めて国に申請するが、審査の過程では経営効率化の取り組みが問われる。
同社は4月に緊急経営対策委員会を設置し、役員報酬カットや支店・営業所の統廃合などの対策を掲げた。本永社長は11月1日の記者会見で、政策保有株の一部売却や、グループ会社資産の活用検討などに取り組む考えも示した。
燃料費高騰や円安加速に歯止めがかからず、沖電を取り巻く経営環境が「未曽有の事態」なのは事実だが、電気料金値上げが県民生活へ与える影響は甚大だ。経営効率化の姿勢や、分かりづらさが伴う料金体系について、丁寧な説明が求められる。
一方で再生可能エネルギーなどへの注目が高まる中で、値下げ改定に着手した2008年以来の燃料構成見直しの機会とも位置付けられる。輸入に頼る化石燃料主体の構成は、国際情勢に大きく左右されることが改めて浮き彫りとなった。原発がない沖縄で、脱炭素とコスト低減の両立をどう図るかも焦点となる。
(當山幸都)