【深掘り】「沖縄に来るのは最後かも…」ルーツ調査に高まる関心 海外と県内の「温度差」、継承に課題も 世界のウチナーンチュ大会を振り返る


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52年ぶりに再会したいとこの新里初江さん(右)と抱き合うヘレン・ヤナムラさん=2日、与那原町観光交流施設(県立図書館提供)

 第7回世界のウチナーンチュ大会が閉幕して、10日で1週間。2016年の第6回大会で過去最大の7千人を超えた海外参加者は今回、新型コロナウイルス禍のビザ発給制限などで約2千人(事前登録)にとどまった。コロナ拡大により1年延期してリアル開催にこぎ着けた、第7回大会の成果と課題を振り返る。

 同大会は里帰りを通して自分のルーツやアイデンティティーを確認する場でもある。期間中は沖縄県内各地で、親戚との再会を果たした各国のウチナーンチュの姿が見られた。県立図書館のルーツ調査には、大会期間の4日間だけで124件の問い合わせがあった。

 息子らと共に大会に参加したハワイの県系2世ヘレン・ヤマウチ・ヤナムラさん(91)は、52年前に沖縄で撮影した写真だけを頼りに図書館の協力を得て、親族と涙の再会を実現した。「沖縄に来るのは最後かもしれない。つながりを次の世代につなげたい」との思いだった。

 今大会のルーツ調査では124件中47件が県民からで、地元の問い合わせが増えたのも特徴だ。世界に渡った県出身者約5万人の渡航記録をまとめた、沖縄県系移民渡航記録データベースを公開した効果も大きかった。

 県立図書館資料班の原裕昭主査は「世代交代とともにルーツをたどるのが難しくなっているのを実感した」と話す。情報を持つ世代が少なく、親族にたどり着けない人もいる。原主査は「外国語ができるスタッフを増やせたら、もっと情報収集が進められる」と語る。

 世代が移り変わり、ウチナーンチュのアイデンティティーや文化の継承も課題となっている。前回大会で10月30日は「世界のウチナーンチュの日」に制定され、毎年ブラジルやハワイなどではイベントが開催されている。一方、沖縄では大きな動きがなく「海外の熱意と沖縄との温度差を感じる」との声も聞かれた。移民の歴史やウチナーンチュのアイデンティティーをどう継承していくかを考える過渡期となっている。

 県系ブラジル人の吉村尊雄さんは、閉会式の次世代代表あいさつでウチナーグチを使い、祖先の歴史を若い人たちへ伝えていこうと語り、「世界のウチナーンチュとぅ、橋かきてぃいちゃびらや(世界のウチナーンチュと橋をかけていこう)」と呼びかけた。

(中村優希)