「自分が疎開学童だったら…」那覇の児童らが対馬丸事件を追体験 戦争と平和を考える 記念会が初の研修


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対馬丸事件の背景や当時の学童の心情を知ろうと記念館を見学する子どもたち=26日、那覇市若狭の対馬丸記念館

 対馬丸事件で犠牲になった学童の心情などを学んで追体験し、戦争や平和について考えを深める学童疎開体験研修が26日、沖縄県那覇市若狭の対馬丸記念館で始まった。1月末まで続く。事件の遺族らで構成する対馬丸記念会の企画で、初の開催。

 抽選で選ばれた那覇市内の小学5、6年生20人が、学芸員から出題された「自分が学童の立場だったらどう行動したか」との問いに向き合い、記念館の展示資料も参考に考えをまとめた。

 対馬丸は1944年8月22日、米潜水艦に撃沈された。犠牲者は氏名が判明した分だけで1484人。このうち学童が784人を占める。

 事件を継承する記念会は、子どもたちが普段の生活で疎開を実感することが難しいと考え研修を企画。今後、渡嘉敷島で行う宿泊研修では、疎開の過酷さを感じてもらおうと、当時の学童が味わった「やーさん、ひーさん、しからーさん(ひもじい、寒い、さびしい)」の体験も取り入れる。

 ロシアのウクライナ侵攻で世界情勢が不安定化する中、より身近に戦争と平和について考えてもらうことも目的にしている。

 26日の研修では、学芸員が「当時にタイムスリップするとしたら、対馬丸に乗るか乗らないか」「1人だけ生き残ったらどうする」などと出題。参加者は考えをまとめるヒントを見つけようと記念館を見学した。乳児の遺影を見つけ、思わず声を上げる子もいた。

 発表の時間では「乗らない。海で死ぬのは嫌だから」「大切な人と一緒なら乗るかな」「亡くなった人の分も生きる」「1人だけ生き残るのはつらいから死ぬ」など相反する意見を共有。学芸員の外間功一さんは「どの意見も大事で正解、不正解はない。出た答えを深掘りして共有し合えることに価値があると思う。今後も話し合いの時間を多く持っていこう」と呼び掛けた。

 真和志小5年の中島大和さんは「自分で考えたり、発表を聞いたりして、学童がどういう気持ちだったかを想像できた気がする。疎開は命がけだったという言葉の意味をもっと学びたい」と研修への意欲を語った。

(新垣梨沙)