沖縄・糸満の「轟の壕」案内中止へ ガイド団体、落石の恐れで 沖縄戦時に1000人超が避難 県庁解散の場所 


社会
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轟の壕周辺の落石は、壕の入り口に向かう長い下り坂の途中で発生した。壕周辺に糸満市は「落盤・落石注意」の立て看板を設置している=2月、糸満市伊敷

 修学旅行の受け入れなどを行っている県内最大の平和学習のガイド団体・県観光ボランティアガイド友の会はこのほど、2023年4月以降、糸満市にある「轟の壕」の案内の中止を決めた。壕周辺の落石による事故防止のためだという。

 壕に向かう下り坂の途中で2年前に落石があり、市は注意喚起の看板を設置した。会は先月、同じ場所で新たな落石を確認。対応を検討した結果、案内の中止を決めたという。

 同会の太田玲子事務局長は「事故があってからでは遅い。市に整備の要請活動も検討していきたい」と話した。

 糸満市の担当者は「壕の重要性は認識しているが、整備計画はない」と話す。民有地であるため土地の取得などの費用や、整備費用などの面で難しいとする。

 轟の壕には沖縄戦末期、千数百人の避難民や敗残兵が隠れた。島田叡(あきら)知事や県首脳部も一時避難し、ここで県庁を解散した。2年前に99歳で亡くなった安里要江(としえ)さんは生後9カ月の娘を壕の中で亡くした。戦後、安里さんの戦争体験を含め、沖縄戦の継承や平和学習にとって、重要な場所となった。

 平和学習でガマに入ることは沖縄戦を追体験する有効な方法とされてきた。しかしここ数年、劣化などで各地のガマの閉鎖が相次いでいる。
 (中村万里子)

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