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ごまかさない 村田紳・沖縄明治乳業社長<仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2005年、ある事件が発生した。発端は配送員の怠慢で、学校給食を回収してきた中に、牛乳を飲まない子のものが封を切らずに残されていた。一昼夜配送車に置き忘れ、それが車内で腐敗した。問題は、それを社が隠蔽(いんぺい)しようとしたことだった。

 同じことを繰り返してはいけないと、事実を公表しようとしたのは当時の学乳宅販課長だった。しかし、改善のために公表しようとした課長に始末書を提出させるという、とんでもない事件だった。

 量販店やスーパーが急増し、弊社がどこに向かえばいいのかという迷いの時期であったかもしれない。しかし、「絶対に隠蔽してはならない」という課長の行動は、「勇気ある決断」として毎年リマインドするよう心がけている。そしてその志は、しっかりと内部改善に生かされている。

 私は、自己保身や一時しのぎの嘘も戒めている。ある時、計算ミスで牛乳が欠品になったことがあった。それをまず客先に知らせることが営業の仕事であり、私は当時の上司と一緒におわび行脚をした。いつから納品できるかと問われても、無責任に明日からできますとは言えない。正直に言わないと、現場の人間に二度、嘘をつかせることになるからだ。

 39期(08年)は初めての赤字決算で、私は量販課長だった。自分が壊れたら部下はどうしていいか分からなくなるから、アドレナリンが出てフル回転、睡眠は3~4時間、それでも人間くたばらない。40期は市乳の赤字をカバーしてなお余りがあった。