「細部のこだわり、メッセージ楽しんで」 コザが舞台の映画「10ROOMS」、神山プロデューサーに聞く


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コザの街を舞台にした映画「10ROOMS」について話す神山繁プロデューサー=8日、沖縄市中央パークアベニューの「プレイヤーズカフェ」

 中央パークアベニューを中心にコザ(沖縄市)を舞台にした映画「10ROOMS」の県内先行上映が11月に始まった。作品のプロデューサーを務め、コザの街づくりに20年以上携わってきた神山繁さん(52)に作品の狙いを聞いた。(聞き手・島袋良太)

―製作した背景は。

 「『ココロ、オドル』(2019年)のプロモーションで来県した加藤雅也さんがコザに泊まった時に『この個性的な場所を題材にした映画を撮り、沖縄ジャンルの映画を作るべきだ』と言われ、構想はあった。その後コロナ禍で街が疲弊し、映画を通して元気になれたらという思いもあって撮影に臨んだ」

 「沖縄のチームで作りたいと思って岸本司監督に相談した。地域発信映画ではあるが、映画としてしっかり成立するクオリティーの高いものにしたかった。バイオレンスな場面もあり、これまでの沖縄映画とは風合いの違う作品が完成した。県内のアーティスト12組にも楽曲を提供してもらった。封切りの時だけでなく、今後は県内アーティストのミニライブ付きの舞台あいさつも順次企画している。ローカル映画だからこそできるPRも仕掛けていきたい」

―映画の特徴は。

 「細部のこだわりやメッセージを楽しんでほしい。例えば沖縄の裏社会とつながる刑事役の尚玄さんは『うるま』(県産たばこ)を吸っていて、その相棒で実は米国の闇社会とつながる加藤雅也さんは『ラッキーストライク』(米国のたばこ)を吸っている。でも米側に雇われている加藤さんが、支配から抜け出したい思いを暗示するようにラッキーストライクを握りつぶすシーンがあったりする。作品は実社会の擬人化でもある。それぞれに挫折や葛藤があり『ウチナーもアメリカもヤマトも俺も、みんなクソだ!』という感情があるが、でもそこから再生していくのが人間だというメッセージも込められている。この街は浮き沈みを経験し、そんな人たちを見守ってきた」

―映画と街づくりを連動していく計画だ。

 「この街は70年前に産声を上げた。最初のビジネスターゲットは米兵だった。そこから日本人向けのショッピング街を目指してパークアベニューになった。ところが郊外型のショッピングモールが各地にでき、今はターゲットを設定し直す必要がある。体験やこだわり、居場所を求めてくる人たちだ。今、パークアベニューの『ニューヨーク化計画』を進めている。ネオンサインや看板で景色を改造し、個性を生かした映像映えする通りにしたい。まちなかだからできる交流、アートイベント、ワークショップなど、昼間の集客につなげるコンテンツも増やしていきたい」