写真集からの複写展示、写真と合わないキャプション…「平良孝七展」主催の沖縄県立博物館・美術館を批判 写真家らが討論会


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 県立博物館・美術館で開催中の平良孝七展に関連した討論会「『復帰』50年 沖縄写真の現在―平良孝七展より」(まぶいぐみ実行委員会主催)が11日、那覇市の県立博物館・美術館で開かれた。同展の第1章が、1970年に沖縄革新共闘会議が編集した写真集「沖縄 百万県民の苦悩と抵抗」からの複写展示となったことについて、登壇者が批判した。

平良孝七展の複写展示について批判する登壇者ら=11日、那覇市の県立博物館・美術館

 登壇したのは写真家の小橋川共男さん、沖縄近現代史家の伊佐眞一さん、琉球新報記者の小那覇安剛さん、写真家の石川竜一さん、東京工芸大学芸術学部准教授の小原真史さん。進行を写真家の比嘉豊光さんが務めた。

 比嘉さんが「写真作品は作家の手によって焼かれたプリントに価値がある。写真集として編集されたものが作品のように展示されているのはいかがなものか」と問題提起した。

 伊佐さんは「これまで私たちが見たことのなかった写真もあるはずなのに出てこなかった。残念だ」と語る。さらに写真集「苦悩と抵抗」で「写真と全く合っていないキャプションもある。自分の写真集なら付けないような文で、後に出版した平良の写真集では同じ写真に別のキャプションが付いている」と指摘した。

 その上で伊佐さんは「余計な説明が入るのは何か別の意図があるとみるべきだ。実際に『苦悩と抵抗』は社会に対するアジテーションの写真集だった」と批判した。

 小橋川さんは「名護博物館にネガがあるのなら、もう一度プリントすることで見えてくるものがあるはずだ。見る人に伝える力が変わってくる。主催者がその点を無視するのならおかしい」と述べた。

 オンラインで参加した石川さんは「平良孝七のものではない言葉には違和感がある。平良の写真ではなく資料であるはずだが、見た人が平良の作品だと受け取ってしまえる展示になっている。別の形はなかったのか」と疑問を示した。

 小那覇さんは「主催者は『キャプションを含めて時代性を表している』と説明しているが、作品1枚1枚に向き合うことを考えればプリントを展示すべきだった」と語った。

 平良孝七展は県立博物館・美術館の復帰50年企画で来年1月15日まで開かれている。復帰前後の激動する沖縄や庶民の生活風景などを撮影した写真家の平良孝七さん(1939―94年)が撮影した259点の写真と、複写パネルなどの資料を展示している。(宮城隆尋)


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