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事前説明ほご オスプレイ着陸 防衛省の言行不一致 かすむ「丁寧な対応」<自衛隊南西シフトを問う>5


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

2022年11月の日米共同統合演習で、陸上自衛隊奄美駐屯地(鹿児島県奄美市)に、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが回転翼を上に向けた「ヘリモード」で着陸した。オスプレイは米軍普天間飛行場所属で、沖縄県内と往復していた。

奄美駐屯地に着陸する米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイ=2022年11月16日、鹿児島県奄美市

奄美大島で自衛隊の活動を監視する住民や議員らは驚いた。19年の奄美駐屯地開設から約1年後、駐屯地を視察した奄美市議会に自衛隊担当者は「(駐屯地の着陸帯は)耐熱構造になっておらず、オスプレイは降りられない」と説明し、オスプレイ飛来の可能性を否定してきたからだ。

視察に参加していた関誠之市議(70)は、オスプレイが飛来したことに「驚いた。いくらなんでも、うそはつかないだろうと思っていた」と疑問を呈した。

今回の演習で海兵隊のオスプレイが奄美駐屯地を使うことは防衛省も把握しており、米軍の独断ではなかった。関氏は「住民を犠牲に戦争に突っ込んでいくのではないかと疑わざるを得ない。うそは戦争の始まりだ」と憤った。

防衛省が自衛隊配備に関連して実態と異なる説明をしていた例は、宮古島市でもあった。

「都合が悪いことは隠す、ごまかす組織だ」。ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会の清水早子共同代表は防衛省・自衛隊をそう断じる。

19年に宮古島市に開設した宮古島駐屯地を巡り、連絡会はたびたび弾薬庫設置の有無を尋ねた。回答は常に「ミサイル弾薬庫は整備しない」だった。

施工図を突き付けて追及しても防衛省は同じ回答を繰り返した。駐屯地開設後、連絡会が「弾薬庫」と指摘し続けてきた「保管庫」に、中距離多目的ミサイルや迫撃砲が持ち込まれていたことが判明した。

宮古島駐屯地についてはまだ不透明な部分がある。施工図に記された「グラウンド」はまだ草地のままだが、連絡会は将来的なヘリパッドとしての使用を危惧する。防衛省は「緊急時にはヘリパッドとして使用する」と説明しているが、「緊急時」の基準は示していない。清水さんは「奄美と同じようにある日突然、宮古にオスプレイが来ても不思議ではない。住民に十分な説明をしないまま、島の軍事要塞(ようさい)化を進めている」と訴えた。

防衛省・自衛隊は「丁寧な対応に努める」という言葉とは裏腹に、事実と異なる説明をしたり、肝心の点を伏せたりしながら「南西シフト」を進めてきた。昨年末の国家安全保障戦略などの改定を巡っても地元説明前に機能強化を決定するなど、増強を優先する姿勢は変わっていない。

(明真南斗、佐野真慈)

連載「自衛隊南西シフトを問う」

2010年の防衛大綱で方向性が示された自衛隊の「南西シフト(重視)」政策の下、防衛省は奄美、沖縄への部隊新編、移駐を加速度的に進めてきた。与那国、宮古島に続き、今年は石垣駐屯地が開設される。22年末には戦後日本の安全保障政策の大転換となる安保関連3文書が閣議決定され、南西諸島の一層の軍備強化が打ち出された。南西シフトの全容と狙い、住民生活への影響など防衛力強化の実像に迫る。

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