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「沖縄に恩返しがしたい」司法試験に合格の上原稜啓さん 子どもの貧困の解決目指す<夢かなう>


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弁護士になる夢を目指す上原稜啓さん=12月、那覇市泉崎の琉球新報社

 昨年、司法試験に合格し、弁護士になる夢に向け、新たな一歩を踏み出した上原稜啓(たかひろ)さん(27)=那覇市出身。これまで勉強を続けさせてくれた両親や周囲への感謝を胸に「豊かで平和な沖縄づくりに貢献したい」と夢を膨らませる。

 子どもの頃から、祖父母の沖縄戦体験や県民大会を通じ、沖縄の社会課題を意識してきた。沖縄戦で逃げる途中、被弾した祖父母の体の傷痕を見せてもらったこともある。2007年には、親戚一同で教科書検定意見撤回を求める超党派の県民大会にも参加した。沖縄戦の歴史や米軍基地の集中に目を向けたことが、法律家を志すきっかけになった。

 中高は昭和薬科大付属に進学し、大学の受験勉強に励んだ。早稲田大から一橋大の法科大学院に進み、受験資格を得て、難関の司法試験に挑戦。一回目は不合格だった。受験できるのは5回まで。通過できず道を諦める人たちもいた。本当に合格できるのか―。大きな重圧の中、昨年2回目の挑戦で合格した。「受かったときは空が青く見えましたよ。ずっともやがかかっていたので」。ほっとした様子で語る。

 父親は国家公務員で「恵まれた」家庭で生まれ育った。合格は「自分1人の力ではない」と言い切る。「勉強を続けさせてくれる環境があったおかげ。だからこそ、この幸運を社会やふるさとの沖縄に恩返ししたい」

 法科大学院卒業後に新宿区歌舞伎町の会社でインターンし、子ども食堂を手伝いに行く機会もあった。同町のシネシティ広場には、家や学校に居場所のない「トー横キッズ」が集まってくる。犯罪に巻き込まれる子どもも絶えない。子どもを取り巻く深刻な状況を少しでも改善したいと、将来は、子どもの貧困課題や地域経済の底上げにつながるような企業支援に取り組みたいと見据える。

 司法試験合格者は、法曹養成の最終課程である司法修習を経て法律家の資格を得る。今年1月から約1年間の那覇地方裁判所で実務修習に臨む。「勉強のため、長く沖縄を離れざるを得なかったけれど、ようやく沖縄のことに関われるチャンスが広がる」。法律家の「卵」として挑戦は続く。夢のその先に向け、研さんを積む日々は続く。
 (中村万里子)


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連載「夢かなう」

 好きなこと自然体で 幼いころに見た夢、学生時代に追いかけた目標、大人になって見つけたなりたい自分。一人一人目指す場所は違っても、ひたむきに努力する姿は輝いている。夢をかなえた人たち、かなえようとしている人に焦点をあて、その思いを伝える。

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