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「このままでは何者にもなれない」タレントから落語家に転身 金原亭杏寿さんの決意<夢かなう>

浅草演芸ホールで落語を披露する金原亭杏寿さん=2022年11月30日、東京都台東区

 「浅草蔵前、八幡様の境内に1匹の白い犬がおりまして」―。

 浅草演芸ホールに人なつっこい声が響く。那覇市出身の落語家、金原亭杏寿(きんげんていあんじゅ)さん(本名・川満彩杏(あい))だ。2023年2月から「二ツ目」に昇進することが決まった。二ツ目になると正式に落語家として認められ、自身の落語会も開けるようになる。沖縄出身の二ツ目は2人目、女性では初めてだ。「『好きな噺家(はなしか)は杏寿』と言われるようになりたい」。大きな瞳を輝かせる。  高校2年から沖縄でタレント活動を始めた。20歳を過ぎた頃に「広い世界を見たい。何か一つのことを究めたい」と思い、16年に上京した。

 転機は17年秋。演技の勉強のため、金原亭世之介(よのすけ)さんの落語会を見た。演目は「宮戸川」。恋物語から悲惨な場面へと展開し、全編が演じられるのはまれだ。「物語の情景が全部浮かんで、映画を見たような没入感があった。衝撃だった」。1カ月後、意を決して弟子入りを志願した。「落語を仕事にしたい。このままでは何者にもなれない」。思いをぶつけると思わず涙がこぼれた。


金原亭世之介師匠(左)に弟子入りして約5年。「師匠のような落語家になりたい」と語る金原亭杏寿さん=2022年11月30日、都内の事務所

 弟子入り後、前座として厳しい下積み生活を送った。毎日寄席で働き、朝から晩まで各師匠の世話や自身の出番を務めた。世之介師匠は積極的に出演の機会を与え、杏寿さんを鍛えた。「何でも挑戦しなさい」が口癖。師匠のアイデアで、おいらん姿で落語をしたこともある。杏寿さんは「アニメやコスプレが好きだったので『面白そう』と思った」と笑う。

 修業を始めて5年近くたった22年8月、落語協会と師匠から23年2月の二ツ目昇進が認められた。師匠から電話で告げられた時、「ありがとうございます」とだけ返したが、電話を切ると「やったー!」と喜びを爆発させた。  「ここからが本当のスタート」と気を引き締める杏寿さん。目標の一つは落語の道へいざなった「宮戸川」を自分の芸にすることだ。「沖縄の話も落語にしたい」と夢は膨らむ。世之介師匠は「落語界のスターになってほしい」と大きな期待を寄せる。

 文・伊佐尚記  写真・大城直也

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 きんげんてい・あんじゅ 沖縄で俳優、タレントとして活動。NHKのテレビ番組「きんくる」のアシスタントMCなどを務めた。2017年に金原亭世之介さんに入門。23年2月11日から二ツ目に昇進する。1月8日に那覇市ぶんかテンブス館、同9日にシャボン玉石けんくくる糸満で世之介さんとの「親子会」が開催される。


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連載「夢かなう」

 好きなこと自然体で 幼いころに見た夢、学生時代に追いかけた目標、大人になって見つけたなりたい自分。一人一人目指す場所は違っても、ひたむきに努力する姿は輝いている。夢をかなえた人たち、かなえようとしている人に焦点をあて、その思いを伝える。

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