有事の際、観光客避難の計画が必要 NIAC、国民保護の報告書を作成


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 南西地域産業活性化センター(NIAC)は9日までに、有事が起こった際の国民保護に関する情報をまとめた報告書「国民保護法における住民及び来訪者の避難想定」を作成し、各市町村に送付した。昨年9月にNIACと沖縄経済同友会基地・安全保障委員会が共催し、国士舘大准教授で、危機管理が専門の中林啓修氏を招いたセミナーの内容をまとめた。中林氏は、有事が起こった際に、島民に加え、観光客など来訪者の避難も想定し、避難計画を策定する必要性を提言した。

 報告書で、中林氏は国民保護措置を行う場合に「避難経路の想定、輸送力確保、避難住民への支援など膨大な業務が発生する」との課題を挙げた。島しょ地域での国民保護の特徴として「避難方針と避難手段の制約」があるとし、2016年の実績ベースで試算すると、交通事業者の輸送力だけで住民や来訪者の避難を完了させる場合、宮古地区では22日程度、八重山地区では18日程度の時間的余裕が必要だとの見方を示した。

 先島地域では、できるだけ早い段階で、武力攻撃予測事態の認定、輸送力確保を十分にしなければ避難は困難だと指摘した。そのほか、法律の中身や、自治体の役割、島しょ地域からの避難についての課題を多角的な視点で紹介している。

 報告書で中林氏は日本政府の安全保障政策の中で国民保護への検討が弱いことを指摘。その上で「国民保護は整備途上にあり、その促進を図るべきだと思っているが、一足飛びにはできない。やはり一個一個のピースを埋めていくことが重要だ」とし、政府や自治体でのさらなる検討、避難に向けた地道な環境作りの必要性を述べた。

 NIACの玉城秀一専務理事は「中林氏の考え方が網羅的に盛り込まれ、国民保護について考えることができる内容になっている。報告書の考え方が各市町村の施策策定の一助となってほしい」と述べた。 (池田哲平)