「一人一人にあったペースで」音楽の力で子どもの発達支援 発表会目標に heart up音療育教室


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ピアノ講師の小湾裕加子さん(左)のピアノに合わせ、楽器を鳴らす竹田圭騎さん(中央右)と見守る母の舞さん(中央左)=2022年11月24日、那覇市首里のheart up音療育教室首里校

 発達障がいや知的障がいがある子どもを対象にした音楽教室の「heart up音療育教室」で指導員を務める熊谷裕美さんが、応用行動分析と音を組み合わせて発達が気になる子どもたちの課題解決をする独自のメソッドを開発した。連携している県内3カ所のピアノ教室で実践し、子どもたちを支援している。

 熊谷さんは応用行動分析の資格であるABAセラピストを持ち、児童デイサービスの勤務経験がある。「子どもたち一人一人の発達にあったペースで支援したい」と考えていた。障がいがある子や発達が気になる子の中には音に興味を示す子や音階に合わせると発声しやすくなる子もいる。これを生かしたメソッドをピアノ講師と協力して開発した。

 「言葉を話す」というスキルを身に付けたい場合は達成までの段階を細分化し、まずは音階に合わせて発声するなど、達成までを小さいステップで積み上げていく。生徒1人にピアノ講師と指導員の2人がつき、特性や特徴に合わせたレッスンを行う。

 竹田舞さん(34)と息子の圭騎(よしき)さん(6)=浦添市=は9月から同教室に通う。圭騎さんには知的障がいを伴う自閉スペクトラム症がある。

 これまでは初めて触る物などを口に入れることで確かめていた。メソッドに沿ったレッスンで、楽器をたたいて鳴らす、音楽に合わせてひもを引っ張るなどのトレーニングを行ったことで、物を認識するための手段が増えたという。舞さんは「こすったり、たたいたりするなど確かめる時の選択肢が増えた」と笑顔でレッスンを楽しむ圭騎さんに目を細める。

 熊谷さんは「無理せず楽しくできることを増やしながら、成長を披露するステージをつくりたい」と受講した子どもたちによる発表会を開催することを目標に掲げる。
 (金盛文香)