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時間稼ぎ持久戦想定 「相互運用」米軍活動拡大も 海兵隊「沿岸連隊」に改編<自衛隊南西シフトを問う>6


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
海軍・海兵隊遠征対艦阻止システム(NMESIS)=2021年8月、米ハワイ州(米軍サイトより)

「海兵隊が将来の戦争で勝利する能力を維持するための継続的な取り組みを反映したものだ」。機動的に離島へ展開する「海兵沿岸連隊(MLR)」が最初にハワイ州で発足した2022年3月、キャンプ・コートニー(うるま市)に司令部を置く第3海兵師団のジェイ・バージェロン司令官は改編式典で、MLRの意義を強調した。

今月12日に開かれた日米外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、米国はキャンプ・ハンセン(金武町など)に駐留する部隊を改編し、25年までに「第12海兵沿岸連隊」に改編すると発表した。ハワイに次いで二つ目のMLRとなる。

MLRは、海兵隊が離島などに攻撃や補給の拠点を設けて戦う構想「遠征前方基地作戦(EABO)」の中核をなす部隊だ。県内ではこれまでもEABOに関連する訓練が繰り返されてきたが、今回の改編はより実戦を見据えた対応と言える。

改編後も部隊の人数は現行の約2千人から変わらないが、配備される兵器が高機動ロケット砲システム「ハイマース」から対艦ミサイルに替わる。同じく対艦ミサイルを扱う陸上自衛隊の宮古島市や奄美大島(鹿児島県)、今後配備される石垣市の部隊との一体的な運用を見込んでいる。

防衛省によると、海兵隊のMLRが使うミサイル発射機は最新型の「NMESIS(海軍・海兵隊遠征対艦阻止システム)」となる予定だ。無人化した車両に短距離ミサイルを搭載し、兵士が離れた位置から操作する。島々を移動して戦うEABOに合わせ、運びやすいよう運転席をなくし小型化した。海兵隊の担当者は公式サイトで「標的になりやすい発射装置と同じ場所にいないため、乗組員の生存率が高まる」とも説明している。

海兵隊が生存率を重視するのは、MLRが相手の攻撃を受ける可能性のある脅威圏内で活動する部隊で、損耗しながらも戦い続けることを想定しているためだ。在沖米軍トップのジェームズ・ビアマン四軍調整官はMLRへの改編について声明を出し「味方の他部隊のために時間と空間を稼ぐことが重要だ」と強調した。

日本と米国は南西諸島を重視し、有事にはこの地域の周辺で時間を稼ぐ持久戦展開を描いている。吉田圭秀陸上幕僚長は12日の記者会見で「南西諸島における島しょの戦力は、自衛隊の方が一歩先につくり上げてきた。米軍が近づいてきてくれるのは相互運用に有効だ」と胸を張った。今後、「相互運用」の名の下に、自衛隊施設を抱える島々で米軍の活動が拡大する可能性がある。
(明真南斗、池田哲平)

連載「自衛隊南西シフトを問う」

2010年の防衛大綱で方向性が示された自衛隊の「南西シフト(重視)」政策の下、防衛省は奄美、沖縄への部隊新編、移駐を加速度的に進めてきた。与那国、宮古島に続き、今年は石垣駐屯地が開設される。22年末には戦後日本の安全保障政策の大転換となる安保関連3文書が閣議決定され、南西諸島の一層の軍備強化が打ち出された。南西シフトの全容と狙い、住民生活への影響など防衛力強化の実像に迫る。

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