ヘチマの新品種「美らへちま」沖縄県が開発 10年かけ研究 加熱で変色しにくく、安定供給も期待 


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沖縄県が育成したヘチマの新品種「美らへちま」=17日、県庁
新品種「美らへちま」を開発した県農業研究センターの玉城聡所長(右から2人目)、県農林水産部の下地常夫農政企画統括監(同3人目)=17日、県庁

 沖縄県農林水産部農業研究センターはこのほど、加熱調理しても果肉が黒っぽくならないヘチマの新品種の育成に成功した。均一な大きさや形状での生産が可能で、県は「美らへちま」と命名して商標登録し、苗の販売も始めている。施設栽培に適し、ヘチマの出荷が少ない冬から春の時期に出荷できるため、年間を通じた安定供給につながることが期待されている。

 ヘチマは「ナーべーラー」と呼ばれる島野菜の一つだが、形がそろいづらいことや、主に夏場が収穫シーズンで年間を通じた出荷の調整が難しいことなどが普及の課題だった。生産の安定化に向けて農業研究センターが2013年から試験研究を始め、要望が寄せられた加熱時の変色についても改良を加えた。約10年かけて「美らへちま」の開発に至った。

加熱したヘチマ。左が新品種の「美らへちま」、右が従来のヘチマ=17日、県庁

 センタ―によると、従来のヘチマに比べて円筒形で断面の大きさなどが安定しているのみならず、果肉がしっかりし香りにクセがないのが特徴という。

 加熱しても黒くならないのは、変色の要因になる酸化酵素を含まない品種に改良したことによる。面積当たりの収量は従来のヘチマと同規模で、施設栽培で冬から春に出荷できるため、従来の出荷と合わせれば通年の安定供給が可能になる。

 昨年10月から、野菜や花きの苗の生産供給を手掛けるサザンプラント(八重瀬町)で美らへちまの苗を販売を開始した。JAおきなわの窓口でも注文を受け付けている。1月13日までに1818本の苗が売られ、育てられた美らヘチマが県内の一部のスーパーなどに並んでいる。

 センターでは今後も露地栽培や加工技術などの試験を進めながら、ナーベーラーンブシー(みそ煮)にとどまらない食材としての利用の展開も見据える。玉城聡所長は「箱詰めした場合の荷姿もきれいで、県外への出荷の可能性もある。ヘチマ全体の需要拡大に期待している」と語った。

(當山幸都)