prime

自衛隊対応、新たな課題 知事「容認」巡り支持層反発も<自衛隊南西シフトを問う>9


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
航空自衛隊のブルーインパルスによる宮古空港使用を巡り、平和団体から届出受理の撤回を求められる県幹部(右)=2022年12月2日、県庁

「県が管理する空港が、(自衛隊が提出した)使用届に不備がなければ使えるとなれば、私たちが暮らす島々は全て戦場になってしまう」、「島々の空港の軍事利用に歯止めをかけるべきだ」―。航空自衛隊の曲芸飛行隊「ブルーインパルス」が宮古島市で展示飛行を行うに当たって、市内の民間空港使用を認めるべきか否かを巡り、昨年12月2日、県幹部は平和団体から厳しい追及を受けた。県は最終的に、下地島空港については民間航空機以外で使用しないと確認した「屋良覚書」を盾に使用を断念させたものの、宮古空港の使用は容認した。

平和団体メンバーの一人は、選挙で玉城デニー知事を支持したことを念頭に「今回は、私たちの(支持した)行為をむげにするもので、納得できない」といら立ちをあらわにした。

対中国を念頭にした南西諸島の防衛力強化の動きは、従来、米軍基地の集中と、それに伴う事件・事故への対応が中心だった県の基地対策に、自衛隊へのスタンスという新たな課題を突き付けている。周辺地域の安全保障環境に対する認識や対応も含め、難しいかじ取りを迫られる場面が増えている。

玉城知事は日米安全保障体制を容認し、自衛隊の役割についても認める立場をとる。これまでは在沖米軍の過重な基地負担の削減を訴えてきたが、自衛隊の急速な増強には「地元の理解と協力」を得るよう求めるにとどまる。

直近では基地負担軽減について「米軍と自衛隊と併せて考える必要がある」として、自衛隊配備に伴う負担を加味した負担軽減を求めていく考えを示すが、旧来の革新支持層からは不満もくすぶる。玉城知事を支える「オール沖縄」内部での安全保障政策を巡る意見の隔たりも生じている。

安全保障に関するスタンスの違いを乗り越えて実現した「オール沖縄」内で、急速な自衛隊の配備強化に対する議論が進んでいない実態もある。

「翁長雄志前知事の時から県政は自衛隊問題には及び腰だったし、(翁長氏が掲げた)『腹八分、腹六分』のため、与党もその姿勢への言及は抑えていた」。ある県政与党幹部はそう認める。一方で、与党が反対の姿勢を県政に強く求めることで「波風が立ちかねない」とのジレンマも抱え、県政の対応を見極めたい考えを示す。

今月12日に行われた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、安保関連3文書も踏まえ、民間用を含む空港・港湾の柔軟な使用を自衛隊だけでなく米軍も含めた2国間協力に発展させることで一致した。公共インフラの使用に対する県への圧力は、今後一層強まることが予想される。

県関係者は「法令上も空港や港湾の使用を止めるのは難しい。日米の軍事的一体化が進んでいることは分かるのだが」と行政としての対応の難しさを語りつつ、自衛隊と米軍の関わりが強まることに警戒感を示す。 (知念征尚、大嶺雅俊)

連載「自衛隊南西シフトを問う」

2010年の防衛大綱で方向性が示された自衛隊の「南西シフト(重視)」政策の下、防衛省は奄美、沖縄への部隊新編、移駐を加速度的に進めてきた。与那国、宮古島に続き、今年は石垣駐屯地が開設される。22年末には戦後日本の安全保障政策の大転換となる安保関連3文書が閣議決定され、南西諸島の一層の軍備強化が打ち出された。南西シフトの全容と狙い、住民生活への影響など防衛力強化の実像に迫る。

>>ほかの記事を読む