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「足が悪くて…」後押しした一言 看護師の目線で「誰もが楽しめる観光を」 第40代ミス沖縄・當山可凜さん<夢かなう>


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「誰もが楽しめるユニバーサルツーリズムを広めたい」と語る當山可凜さん=6日、名護城公園ビジターセンターSubaco(大城直也撮影)

 「健康な人もそうでない人も、誰もが沖縄に行きたいという希望をかなえられるべきだ」。古里・名護の海を思い浮かべ、當山可凜さん(24)は1年前、帰郷の決意を固めた。

 2022年度の第40代沖縄観光親善大使ミス沖縄コバルトブルーとして、仕事の中心となっているのが、ユニバーサル・ツーリズム(年齢や性別、障がいの有無等にかかわらず楽しめる観光)の普及だ。看護師として就職した大阪の医療機関で、障がいのため沖縄観光を諦める人がいることを知り、自らの役割を見いだした。

 好きな沖縄のために働きたい、という思いはふくらむ一方だった。決断を後押ししたのは、ある患者の一言だ。「沖縄か、ええなあ。行ってみたいな。でも私は足が悪くて、行けへんのよ」。当たり前に観光できない人がいる。「私に何ができるだろう」。頭の片隅にあったミス沖縄への応募に踏み切った。

 ミス沖縄は物産展などイベントの出席、表敬訪問、式典での介添えと、仕事内容は幅広い。この仕事に挑戦し「(障がいや病気があっても)誰もが楽しめる沖縄観光」の手助けをしながら、自分の可能性を広げたい。幸運なことに「名護さくらの女王」としての経験があった。看護師を辞めることに迷いもあったが、その経験を強みに変えて審査員にPRし、選考を通過した。

 コロナ禍の現在、SNSでの発信も観光親善大使としての重要な仕事になりつつある。昨年11月には、名護パイナップルパークを見学で回る「パイナップル・トレイン」に、車いすで乗れることを取材し、インスタグラムで伝えている。

 大人のおむつ替えができるトイレ「ユニバーサル・シート」が国頭村の大石林山に設置されていることもインスタグラムで発信した。高度なバリアフリー設備として、県外の空港などでも普及が進んでいるのを出張先で見てきたからこそ、沖縄の観光地として誇らしく思えたという。

 「夢は誰にでもすぐに見つかる訳ではない。でも、自分の好きなことなら努力できる」。昨年12月には母校の大宮中学校に招かれ、全校生徒394人に語りかけた。今やるべきことは、との質問には「自分のありのままに、学生生活を過ごしてほしい」と率直に答えた。その中から、自分の役割が見つかると信じているからだ。(増田健太)


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連載「夢かなう」

 好きなこと自然体で 幼いころに見た夢、学生時代に追いかけた目標、大人になって見つけたなりたい自分。一人一人目指す場所は違っても、ひたむきに努力する姿は輝いている。夢をかなえた人たち、かなえようとしている人に焦点をあて、その思いを伝える。

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